このラティウムでは色々な物が売っているらしいけれど、ケーキ屋はあるのかしらねぇ。



「ああ、そう言えば」

「はい?」



ベッドの上で跳び跳ねていたリルに話し掛けると、首を傾げられた。


………相変わらず可愛いわね、この子。



「ここでは私のことを主さまと呼んでは駄目よ。怪しまれてしまうわ」



と言うか、その前に私の趣味とか人格が疑われるのではないかしら。



「確かにそうでございますわね!ではお姉さまとお呼び致します!」

「待って。どうしてそうなるの?普通にデルフィナと呼べば良いじゃないの」

「いいえ!そんな畏れ多いこと、わたくしはできませんわ!」



胸を張って言う彼女に苦笑いしか浮かばない。



「……もういいわ。好きにしなさい」

「はい、お姉さま!」

「……………」



駄目だわ。違和感しか感じない。


………でもちょっとときめい………いいえ!そんなことはないわ!


………ごほん。





それにしても、リルと言いアルバロと言い、私の学校生活はいったいどうなってしまうのかしら。





果てしない不安を感じながら制服から私服に着替える。


今日は授業がないから、ミルス・クレア内を探索しようと思っているの。


これから生活をする場所だからしっかりと頭に叩き込んでおかなくてはね。



「じゃあリル、行ってくるわね」

「はい!行ってらっしゃいませ、お姉さま!」



敬礼をして見送ってくれたリルに苦笑しながら、部屋を出た。





女子寮の廊下には上質な赤い絨毯が敷かれている。


その柔らかい感触を少し楽しみながらロビーに向かって歩いて行く。




 






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