デルフィナがルームメイトを連れてきたのは次の日の朝食の時間だった。
「アルバロ、彼女が私のルームメイトよ」
「はじめまして!リルと申します!」
にっこり、と擬音が付きそうな程の笑顔で一礼したのは、あの忌々しい彼女の猫と同じ名前の少女。
美しいデルフィナと並んでも劣らない美貌の少女だが、この冷えた緑の瞳には見覚えがある。
妙に威圧感のある雰囲気もあの猫にそっくりだ。
そっとデルフィナを盗み見ても特にこれといったものは読み取れない。
第一猫が人間になるなどあるのだろうか。
そもそもあれは本当に猫だったのだろうか。
「俺はアルバロ。よろしくね、リルちゃん」
疑問を抱きつつも、いつも通りの作り笑いで応えると、少女に笑顔のまま睨まれた。
普段はこんな些細なことは気にならないが、こいつにされるとやけに腹が立つ。
同じように睨み返すと、俺達の不穏な雰囲気を感じ取ったデルフィナが訝しげな顔をした。
「ちょっと貴方達、もう仲が悪くなったの?と言うか、今の数分でなにがあったの?」
「お姉さま!彼はお邪魔虫だと認識致しました!嫌いです!」
「何故?」
「奇遇だね。俺も君のことは嫌いだよ」
「………何故?」
彼女は本当に意味が分からなそうに首を傾げているが、こればかりはどうしようもない。
単に相性の問題なのだろう。
何よりもまず、ただのルームメイトのくせに俺よりもデルフィナと仲が良さそうな態度が気に食わない。
「さぁ、お姉さま!こんな男は放っておいて、授業に向かいましょう!」
「デルフィナは俺と授業を受けるんだ。邪魔しないでくれるかな?」
唖然としている彼女を他所に、授業が始まるぎりぎりの時間まで言い争いを続けていた。
予測不可能な敵
(邪魔だ、なにもかもが気に障る)
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