「ねえ、まだ怒ってるの?」
「……………」
「ねえねえ、デルフィナー」
「……………」
少し後ろからマントを引っ張られるけれど、全力で無視する。
あの後、食べられなくてすべて残してしまって、とても申し訳ない気持ちのまま店を後にしたわ。
時間もかなり経っていて。
と言うか、もう気分的に買い物なんて出来ない。したくない。
はぁ、と溜め息を吐いて学校までの道を急ぐ。
もうこの男とは街に出ない。
絶対に絶対に、絶対に!出ない。
心の中で固く決意した途端、強く腕を引かれて思わず立ち止まった。
振り向いて彼を睨み付ける。
「ごめんね?」
「心にもない謝罪をありがとう。貴方なんて大嫌いだわ」
暫し固まった彼の腕を振り払う。
前々から性格が悪いと思ってはいたけれど、本当に最悪だわ。
おかげさまであんな無様な姿を晒す羽目になってしまったもの。
恥ずかしくて仕方がない。
「悪かった。どうしたら許してくれる?」
宥めるような苦笑いに余計に腹が立つ。
まるで私が駄々を捏ねているみたいじゃないの。
そこまで考えて内心で溜め息を吐く。
………その通りだわ。
くだらない意地を張っているのは私の方。
こういう時、アルバロの方がずっと大人だと思い知らされる。
でもやはり認めるのは悔しい。
「……マカロン買って」
「マカロン?」
驚いた顔で聞き返す彼に無言で頷く。
「それで許してくれる?」
「……あと、ヴォルカノ・ボッカはもう見たくないわ」
「はいはい」
また苦笑を漏らした彼をもう一度だけ睨んで、マカロンの屋台に向かった。
未熟な心はいつでも血で滲んで
(それでも嫌いなの!)
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