ちらり、と下にある赤いスープに目を落としてすぐさま反らす。
………無理無理、絶対に無理!
こんなもの食べられない!
「……私、別のものを頼むわ」
「あれー?せっかく作って貰った料理を一口も食べないなんて、礼儀がなってないんじゃない?」
「う、」
思わぬ言葉にメニューへ伸ばした腕が止まる。
「でも!これは貴方が勝手に頼んだもので!」
「それでも二人分あるんだから、一つは君のでしょ?」
「うぅ……」
「お店の人にはどっちが頼んだかなんて関係ないしねえ」
「……………」
的を得た言葉に思わず口ごもる。
確かに、私が納得して頼んだことになっているし、お料理にまったく手を付けないのはシェフの方に失礼。
………でも!
「辛いものは嫌い……」
「好き嫌いは駄目だよ?」
はい、とスプーンを差し出される。
その上には血のように赤い液体。
………一口だけなら、大丈夫かしら。
いやでもこの色は絶対におかしいと思うの。もう人間が食べるものではないわ。
これ絶対に辛い。物凄く辛い。
辛いものは嫌いなのに。大嫌いなのに。
「ほら、口開けて」
「うぅ、」
にっこりと満面の笑みで笑うアルバロと彼の持つスプーンを何度か見比べて、恐る恐る口を開けた。
ゆっくりと口に流されるスープを飲み下して。
―――刹那。
「んっ!」
慌てて水を飲む。
辛い辛い辛い辛い辛い辛い!
舌が痛い喉が痛い!
無理無理無理無理っ!
「あっははは!」
悶える私の目の前で爆笑している彼が本当に憎たらしい。
今すぐ殺したい。
本気で殺したい。
取り敢えず三回死になさい!
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