彼は元々甘いものは苦手だし。
確かに顔だけは良いから女性からチョコレートを貰えはするでしょうけれど。
あの男の場合、冷たく笑いながらごみ箱に捨てる姿がありありと思い浮かぶわね。
そんな勿体無いことになるのならば、私が自分で食べるわよ。
「あら」
「どうしたの?」
「噂をすれば影、ですわね!」
彼女の言葉に首を傾げた刹那。
―――コンコン
「……まさか」
リルに猫になるように告げて急いで玄関に向かう。
今日は誰ともなにも約束してなどいない。
それなのに私の家を訪ねて来る人間など、一人しかいない。
「………なにか、ご用かしら?アルバロ」
「匿ってくれ」
「……………はい?」
些かうんざりしたような顔の彼は許可を待たずに私の家の中に入っていった。
………レディの部屋に勝手に上がるだなんて、本当にイイ度胸しているわねこの男。
心の中だけで毒吐いて、取り敢えず鍵を閉めて私も奥に入る。
彼は椅子ではなく、窓際にあるソファに座っていた。
ご丁寧に窓まで開けている。
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