2月14日。
今日は全国の恋する乙女達が意中の相手にチョコレートを送る日。
又はクロエ曰く、チョコレートメーカーの陰謀が悉<コトゴト>く露見される日。
そう。バレンタインデー。
この日が近付くと女性も男性も妙に色めき立つのも、チョコレートの値段が無駄に上がるのも全国どころか全世界共通のようね。
それはこの【地獄】でもあまり変わらない。
「完成、ね」
「わー、すごいですわ!主さま!」
「あなたも手伝ってくれてありがとう、リル」
「どういたしまして!」
テーブルに並ぶのは数々のチョコレート菓子。
ザッハトルテにマカロンにガトーショコラにウイスキーボンボンにトリュフに生チョコにフォンダンショコラにチョコブラウニー。
一週間前から買い占めた材料を使って思い付くままにチョコレート菓子を作って早六時間。
気付けば日付が変わっていたわ。
前世ではどこかの誰かさんの為に作り続けていたから料理はとても得意。
レパートリーも豊富なのよ?
今日のものも上手くできたと自負できるわ。
とは言え、私にはチョコレートを渡す相手もいなければ渡すつもりもない。
まあ酒場のマスターにはお返しに良いお仕事を貰いたいと云う下心込みで差し上げるつもりだけれど。
ああ、あとリルにはあげるわよ?
いつも頑張って働いてくれているから感謝の気持ちも込めて。
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