強姦3P
江宗要素あり
手折られた花
(うそだ……)
今見たことは全部嘘だ。きっとまやかしだ。耳を塞いで目を塞いで、すべて忘れてしまおう。あんなのは、すぐに忘れた方がいい。
彼女は人を寄せ付けない子だった。彼女がクラスの誰かと一緒にいるところは滅多に見たことがない。いつもイヤホンを付けて音楽を聴き、たまに思い出したようにノートに何かを書き付けていた。成績は良いのに、窓辺の一番後ろの席で桃色の髪を光に透かし、気怠げにいつも授業を聞き流している。そんな彼女を隣の席から眺めるのが私は好きだった。一度話しかけたことがあったこと、彼女は覚えているだろうか。何を聴いてるの?私の問いかけに彼女は、今日はピンクフロイドです。と呟くような声で少し微笑んで答えた。その雰囲気は人を寄せ付けないどころか儚げで少し優しくて、高等部の優等生で有名なお姉さんの江雪さんとどこか似ていた。
だから、あれはきっと嘘。学校から寮に帰って、途中前を通りかかった彼女の部屋のドアがほんの少し開いていて。彼女のだめです、いやです、なんて言葉が聞こえたものだから、私は何か困っているなら力になれればと思って覗いたのだ。覗いてしまった。そこで見てしまった。ーーベットの中で乱れた制服で抱き合う、宗三ちゃんと江雪さんの姿を。思わず鞄を落とした私は、音に顔を上げた宗三さんとばっちりと目を合わせてしまって。突発的に自分の部屋へ逃げ帰って布団の中へ潜り込み今に至る。
(わるい、夢だ。さめろ……っ)
このまま、寝ちゃおう。制服が皺になってもいい。だってこれは夢だから。起きたら制服もちゃんとハンガーにかけてあって、ちゃんと朝がきて、学校に行ったらいつもの宗三ちゃんがイヤホンをさして窓辺に座ってる。そしたら私はちょっと勇気を出して聞いてみよう。何を聴いてるの?そしたら宗三ちゃんは笑うんだ。今日もピンクフロイドです。って。そして、そして……
「なまえ」
宗三ちゃんの声が聞こえる。よかった、これは夢なんだ。全部全部、まやかしだ。
「なまえ、起きてください」
「……え?」
肩を揺すられて目を開けると、制服でベットに寝転がった私を宗三ちゃんが覗き込んでいた。宗三ちゃんの制服は胸のリボンが少し曲がってるもののちゃんと着られていて、私はちょっとホッとした。しかし宗三ちゃんが私になんの用だろう。
「鞄、僕の部屋の前に落ちてました」
「あ、ありがと……」
宗三ちゃんの部屋の前に落ちていた私の鞄。なんで私の鞄が届けられるのか、わかってしまう。これはあの続きだ。でも、あれは、きっと、きっと嘘だ。何かの見間違いだ。宗三ちゃんは鞄をベットの下へ置くと、私をじっと見つめた。綺麗な目は左右で色が微妙に違っていて、透き通った海のようなブルーと、翡翠のようなグリーン。色が違っているなんて、知らなかった。ふいに先程合ってしまった目が、その情景が、私の目の奥にフラッシュバックする。
「見たのですか?」
ぱっと目を逸らした私に、また別の声がかけられた。隣を見ると、江雪さんが私を窺っている。初めてこんな近くで江雪さんを見たけれど、少し目が鋭くて、噂通りの眉目秀麗な整った顔をしていた。射抜くようなその瞳に、胸がざわめく。何を言われたの?見たのですかと、そう、何を?
「……え、と」
「…………なまえ?」
宗三ちゃんの声。私はゆっくりと思い出す。宗三ちゃんの部屋の前、鞄を落とした時、さっき、さっき私は何を見たんだろう。思い出さなければならないのに、思い出したくなくて。宗三ちゃんは私の頭を撫でると、そっと私の耳元に口を寄せた。
「姉様もわざわざ聞くなんて、意地が悪いですね」
「宗三ちゃん、私……」
「いいですか、なまえ、貴女が見たのは、セックスですよ」
「セッ……」
私は赤面した。いや、でも。だとしてもおかしいじゃないか。だってこの学校は女子校な訳だし、そこに通ってる宗三ちゃんも江雪さんも同じ女の子な訳だし。保健の授業でも、同じクラスの安定ちゃんが持ってきたレディコミでも女の子の相手は男の子なのに、宗三ちゃんは江雪さんとセックス、してたって……。
「お、おかしいよ!だって……」
「どうしてですか?僕達が女だから?それとも姉妹だから?」
「……うん……」
「ふふ、なまえがそういう子でよかった」
どういう意味だろう。緊張して動けない私の頬に手を添えて、宗三ちゃんは耳をはむ、と食んだ。私はただただ驚いて、身じろぎもせずに小さく悲鳴を漏らした。
「ヒィッ!な……っ」
「女同士って、気持ちがいいんですよ」
「な、なに、なにす……っ」
「セックスです。すぐに貴女もやめられなくなります」
私があっと声を漏らす前に、宗三ちゃんと江雪さんは素早く私に飛びかかった。いや、飛びかかった訳ではないけれど、それはそれは素早く宗三ちゃんは私の口を塞いだし、江雪さんは私の両手を纏めた。そして寄せたままの唇で、私の耳をべろりと舐める。そんな、セッ、セックスて。必死で抵抗しようにも、二人がかりで押さえつけられて何もできなかった。江雪さんが片手を私の背中に回し、ブラをぷちんと外した。私が驚いて叫んだりしないのを確認すると、待ってましたと言わんばかりに宗三ちゃんが私の胸に手を添える。そして控えめにふよふよと揉みだした。
「わ、わ、やめ……っ」
「黙っていてください」
「なんで、なんでぇ、なんでよ……」
混乱する私の言葉を無視して、宗三ちゃんは私の乳首を抓りあげた。痛い!私は歯をくいしばって絶叫を我慢する。こんなところを他の人に見られたら、私だけでなくて宗三ちゃんも江雪さんも大変なことになると、私は心のどこかで大きな声を出すのをセーブしていた。小さな声で抗議を繰り返す私を無視して、宗三ちゃんは胸を揉み、江雪さんは私のスカートを捲る。
「どうです?姉様」
「ねぇ、やめてよ……っ」
「……濡れませんね」
「やだ、やめてってば……っ!」
パンツを剥ぎ取られ、脚を大きく広げられる。肝を冷やした私が形振り構わず絶叫する直前に、わかっていたかのように宗三ちゃんが口を覆って離した。ぽろんぽろんと涙が溢れる。
「……や、やだってぇ……」
「宗三、彼女が泣いていますよ」
「おや、かわいいですねぇ」
両手を私の胸に置きながら、私の涙を舌で拭う。私は身体を捩って逃げるようにベットへ寝転がった。これ幸いとばかりに江雪さんが私の脚を持ち上げる。宗三ちゃんは私を追いかけて覆い被さり、色の違う目で真剣に私の目をじっと見つめた。江雪さんが、短く呟く。
「唇を」
「ああ、忘れてました。なまえ、キスはしたことありますか?」
私が首を横に振るのと同時に宗三ちゃんの唇が降ってくる。くっつけた唇の間からぬるっと舌が這い出てきて、私の口の中へ入ってきた。宗三ちゃんの動きはどれも素早くて的確で、私が抵抗している暇もない。鼻でぎこちなく息をしながら、口から吐く息が食べられる。私の歯に舌が当たる感覚、胸をもみくちゃにされる感覚、そして江雪さんが私の内腿を撫でてくる感覚。なんだろう、不思議な気持ちになってくる。
「んゃ、あぅ……」
「……触りますよ」
「姉様、優しくお願いします」
湿らせた指が、私のあそこの……上の、陰核と呼ばれる部分に触れた。身体中にびりっとした刺激が走って、私は思わず身体を震わせた。かちっと私の歯と宗三ちゃんの歯が触れ合う音がする。宗三ちゃんが私から唇を離したので、私は息をついた。その瞬間に、また陰核を押し潰される。
「ンァッ!やぁ……っ」
指が触れるたびに刺激がびりびり沸き起こる。身体から沸き上がるなにかが、勝手に口から声を出させる。大きな声なんて出したくないのに、響く声が漏れてしまう。
「あっ、ああっ……」
「ふふ、気持ち良さそうですね」
宗三ちゃん、全然気持ち良くなんかないよ。こんなのを気持ち良いって呼ぶなら、私は一生こんなことしないで過ごしたいって思う。身体をつん裂くような刺激に全てが押し流される。もう既に怖くて、それを伝える術もなくて。うるさい私の口を塞ぐみたいに、宗三ちゃんに唇を奪われる。
「ンフゥ、ん、やぁっ……」
「ふ、はぁ……姉様」
「分かっています。なまえ、舐めますよ」
「んぁ!や、なめ……?」
待ってほしい。舐めるって、どこをどうやって?起き上がって抵抗しようとした私を横から宗三ちゃんが邪魔する。そのまま宗三ちゃんの向こうで江雪さんが私の股座に顔を寄せた。なんてところを!全力で宗三ちゃんを押し退けようとしたところで、身体にびりびり激しい刺激が登ってきた。私の上体はベットに逆戻りし、はしたない声が際限なく漏れていく。
「あっ、あ、あぁっ、」
陰核を舐られ身体中がぞくぞくする。やだよ、やめてよ、そう思うのに、口が何かを伝えることを拒んだ。拳を握り締めて、暴力的な快楽に耐える。気持ちがいい訳ではない、しかしこの感覚を表現するのに、快楽以外の言葉を知らなかった。
「ふふ、気持ちいいですよねぇ。こんなに涎を垂らして」
「やぁ、あっ、ああ……」
気持ち良くなんかない。身体の奥に無慈悲に叩き込まれる快楽がどんどん膨らんで、どうなるのかわからない恐怖が膨らむ。怖い、こわいよ。快楽は激しく私を襲い、これ以上ない程背筋が戦慄く。なにかが身体の膜を破って、今にも弾けてしまいそうで。そして次の瞬間、それは本当にパチンと弾けた。
「おぁああああっ!!」
ぐったりと身体から力が抜ける。身体の底にどろりとした残骸がこびりつき、意識がふわふわと浮いたり沈んだりする。これは、なんだろう……。
「早かったですね」
「素質があるのかもしれませんねぇ、姉様、次は僕が」
「そんな矢継ぎ早に」
「休ませてなんて、あげません」
私がぼんやり宙を眺めていると、宗三ちゃんは右手の指を咥えて濡らしてから、私の恥部に手を伸ばした。しどとに濡れた私の恥部に、濡れた指が入り込んでくる。なんとも言えない不快感が湧き上がり、私は不機嫌そうに小さく唸った。
「ううーっ」
「ほら、なまえ」
「んぅ……っ」
ぐちゅぐちゅと音を立てて宗三ちゃんの指が出入りする。たまに偶然のような感じで陰核に掌があたって、そのたびにまたあの衝撃が走る。私がいくら身体をぴくぴく跳ねさせても宗三ちゃんは手を止めなかった。指はいつの間にか増えて、二本の指で中を抉られ、ふいにある一点を擦られた時、今までとは種類の違う感覚が湧き上がってきた。
「んぅ……っあっ、」
「中で感じるんですか?いい素質ですね」
「宗三よりも淫乱かもしれません」
「や、違ぅ……っ」
「姉様はいつもそればかり言いますね」
淫乱って、褒め言葉でないことは確かだと思う。それどころか酷い罵倒では?私を罵った江雪さんは移動して左横から私を抱き起こし、愛おしそうに口を吸った。巧みな舌遣いに、宗三ちゃんから与えられる感覚が増幅する。それはさっきとは違うけれど、確かに快楽だった。左から江雪さんがさらに意地悪を言う。
「ん、はぁ……気持ちよかったらいいと言ったらどうです?」
「や、ないもん……っ」
「強情ですねぇ、ここ、はこんなにはしたなく濡れそぼっているのに……」
「んぁ……っ!」
ここ、と宗三ちゃんに陰核をつつかれて思わず声が漏れる。二人とも酷いよ。本当に気持ちいいとかじゃないんだよ。ただおかしくなってしまいそうで、怖いんだよ。今度の快楽は、突き抜けるのではなく、身体の奥を蝕むようにせり上がってくる。私は何かに縋りたくて、私を抱き起こす江雪さんの身体にしがみついた。
「ねぇ……っやなの、こわれちゃうの……っ」
「今触っているのは私では無いですよ」
「なまえ?なんです?僕には聞こえませんねぇ」
聞こえないふりした宗三ちゃんが、快楽の生まれる一点をぐりぐりと擦ったので、私は大きな声を出さずにはいられなかった。そのまま緩急を付けて中を擦られる。まるで登りゆく感覚を復習させるように、激しい責めに限界が近づいて、責め苦を緩められて引いてを繰り返す。私はひぃひぃ泣きながらただ江雪さんに縋り付いた。何度も繰り返すうちに、言いようの無い恐怖が薄れていき、そして、確実に登っていく。また、また凄いのがくる……私の身体は受け入れる準備をはじめ、反対に私の心は嫌だ嫌だと叫びを上げた。喉の奥から本物の叫喚が飛び出す前に、江雪さんは私の口を塞いだ。
「ンンンンッ!ンンーーッ!!」
「うわぁ〜、凄いですねぇ。最初から指だけでナカイキ」
「本当に、淫乱ですね」
江雪さんに反論する力も残っていなくて、私はただくたりとベットに倒れこんだ。もう疲れたのに、身体の奥がまだまだ燻っている気がする。そんな私の身体を見透かすように宗三ちゃんはさらにしつこく私の身体を弄った。もうよしてあげなさい、意識の端で江雪さんの声が聞こえる。なまえが病みつきになるまでやめてあげません、宗三ちゃんは戯けた声で笑った。そして、私の身体をべたべた触る。私は駄々をこねるみたいに唸るけれど、その拒否が通ることはなかった。
***
本当に、何が起こったのかわからないのだ。彼女が教えてくれた名前を借りるならば、それは確かにセックス。そして私はアレ以外のセックスを知らないことになる。アレ、何度も何度も、何度でも登らされて、登りつめて。パチン!と弾けて、その余韻が身体に纏わりつく。それの繰り返しで、恐怖の予習復習を続ける。泣いて叫んでも許して貰えない、宗三ちゃんと江雪さんがくれるアレ。最後に見たのは、薄暗い部屋の中でにたにたと笑う宗三ちゃんの口がスローモーションみたいに動く様だった。
「逃げられませんよ」
たしか、そう。もうこんなことを知ってしまったら、もとの生活になんか戻れないと、アレの最中に何度思った事だろう。しかし、目が覚めた私の部屋には制服がちゃんとハンガーにかけてあって、ちゃんと朝がきて、学校に行ったらいつもの宗三ちゃんがイヤホンをさして窓辺に座っていた。私はちょっと勇気を出して、彼女に話しかけるのだ。何故だろう、まるで何もなかったかのように。
「何を聴いてるの?」
そしたら宗三ちゃんは儚げに、いつも通りに笑って言う。あんなことなんか、アレなんか、セックスなんか無かったみたいに。
「今日もピンクフロイドです」
そして、そして……私達はまた今日を始めるのだ。窓辺の一番後ろの席で桃色の髪を光に透かし、気怠げにいつも授業を聞き流す彼女を見つめる。見つめながら、身体の奥がちりりと焦がれたのも知らず、ましてやそれを知って一人ほくそ笑む宗三ちゃんの心の内も知らず。私の今日はいつも通りに、いや、何かがいつもとは違いはじめていることを、私だけが知らないで。