おめでとう、ありがとう


>>万事屋



 この日は、俺にとって、いろんな意味で特別だ。
 自分の名前すらなく、ただその日を生きていた俺に初めて笑いかけてくれた先生。その先生が俺を拾って、名前と居場所と、そして誕生日というものをくれた日。

「銀さん!誕生日おめでとうございます!」
「おめでとうネ、銀ちゃん!」

 こうして、誕生を祝う言葉をもらえる。たくさんの笑顔と共に。
先生に拾われて1年後に、盛大に祝われたときと変わらず、気恥ずかしくて慣れないそれ。
 けれど、どうしようもなく嬉しくて、嬉しくて。

「ありがとな。新八、神楽」

 こうして、少ない言葉でしか返せないけれど、本当はもっと言いたいことはあって。
 その想いを込めて、大切な家族である子供たちを抱き寄せた。

「ありがとな、」

 何かを背負うことを恐れて、逃げていた俺を。護ることに縛られていた俺を。
 そんな俺を、掬い上げて、護ってくれて。本当にありがとう。

「くすぐったいですよ、銀さん」
「全く。銀ちゃんは甘えん坊ネ!」

 笑いながら、抱きしめ返してくれる存在が、とても愛おしい。
 ゆっくりと髪を撫ぜる手が、いつかのものと重なって、とても愛おしい。

「銀さん、」
「銀ちゃん、」

ぎゅっ、と腕に力が入って、俺より少し高い体温がじんわりと染みてきて。

「誕生日、おめでとう」
「生まれてきてくれて、ありがとう」

 まるで自分のことのように嬉しそうな声で、愛おしい子供たちが祝福の言葉を囁いた。

 こんな幸福の中に在る俺よ、おめでとう。
 こんな幸福を与えてくれて、ありがとう。



END.

銀時、誕生日おめでとう!!
生まれてきてくれてありがとう!

(2011.10.10)




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