La Sua temperatura.


>>ムクツナ


 この手には、何もない。掴めるものも、縋るものも、抱きしめるものも、何もありはしない。

「骸・・」

 静かに呼ばれた名前と、柔らかに重ねられた手。温かいその温度を知って、どれだけ自分の手が冷たいかを知った。

「無理、しないでいいよ」

 俯いていた僕の頬に、君の手が触れる。あぁ、その何と温かいことか。

「無理? そんなもの、していませんよ」

 錯覚しないように、驕らないように。僕は今、笑えているでしょうか?

「骸・・」

 そっと伸ばされた手が、腕が、からだが、温もりが。優しく僕を包んだ。
 あぁ、この温もりが怖いのだ。

「笑わなくていい・・、話さなくてもいい・・」

 ―何もしなくていいから、ただ私と生きて…。

 泣けない僕の代わりと君が泣いて、伝えられない言葉の代わりと抱きしめて。僕に染みゆく君の体温と匂いが、こんなにも心地良いから。
 だから僕は、

「Io voglio assassinarLa…」

 君を泣かせたくはないから、僕は君を突き飛ばす。この禍々しく血生臭い闇から、あの温かく降り注ぐ光へと。
 僕と貴女は、交わることを許されなかった輪廻。
 さぁ、別れの銃声を響かせて。



end.

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突然のムクツナ再燃。

2013.11.02