幸福な運命


 抱き締める。口付ける。繋がり合う。感じ合う。
 会わない日などないというのに、彼と出逢うより前の独りの時すら無くすほどに求め合う。もっと、いっそ溶け合うほどに体温を求めて抱き締め合う。

「景吾、愛しとる。‥ほんま、愛しとる」
「っ、あぁ‥ゆう、し、俺もだっ」

 隔てる全てを取り払い、鼓動が融け合うほどに激しく互いを求める。求めて、与えて。まだ足りないと抱き寄せては口付けを交わす。
 淫猥な水音がぐずぐずに融けた理性を刺激し、快楽を満たす。跡部の中へ埋められた忍足の自身が出入りを繰り返す度に、幾度となく放たれた白濁が溢れては伝い落ちる。

「う、あっ!ゆ、し!侑士っ!」
「もっと、もっと呼んだって、景吾」

 打ち付けられるリズムが早まり、跡部の断続的な嬌声は掠れるほど高く響く。互いに絶頂が近いことを感じ合い、熱を求め合いながら与え合う。
 そして、抱き寄せ合いながら何度目かも知れない白濁を二人同時に吐き出した。

「ん、‥ぁあ、」
「景吾、好き。めっちゃ好き。愛してる」

 最奥に注がれる熱に幸福を感じながら、跡部は忍足の鼓動を求めて抱き締める腕に力を込める。忍足もそれに応えるように力を込めると、生理的な涙で濡れた瞳の端に口付けを落とした。

「あ、時間、」
「ん?何?」

 視界の端に捉えた時計が頂点で合わさるのを見て、跡部は蕩けそうな笑みを浮かべながら忍足へと口付けた。跡部からの温かな口付けを受けながら、そこに込められた愛おしさを感じて忍足の眼尻に微かな涙が浮かぶ。
 互いを知らなかった頃など知らない。戻れないし思い出せもしない。出逢わない過去などない、離れる未来などない。
 これから、如何なることがあろうとも二人は一緒に居る。離れられるわけがない。離れようとも思わない。

「誕生日、おめでとう。侑士」
「ありがとう。景吾‥俺と出逢ってくれて」

 これは運命なのだ。
 出逢ったこと、想いが通じたこと、愛し合うこと。全てが幸福な運命。

「景吾、愛しとるよ。ほんま、ありがとうな」
「ん、」

 もう一度、今度は吐息すら奪うほどの口付けを交わす。
 迎えたばかりの己の誕生日。プレゼントと称して跡部を貰ってもいいだろう、と忍足は埋められたままだった自身に熱が集まるのを感じた。
 熱くなる感覚に吐息を洩らした跡部を抱き締めて、体温をひとつにする。
 嗚呼、なんて幸福な運命だろうか。



end.

忍足、誕生日おめでとう!
跡部様と末永くお幸せに!逮捕されろ!

12.10.15


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