風呂から上がり、時計を見れば昼を当に回っていた。
オレは帰り仕度をし終えれば、寝ている男に何も言わず部屋を出た。
オレとあの男は特別な関係なんてものじゃない。
ただの体だけの関係。
アイツはどうかは知らないが、オレはあの男に対して何の感情も抱いていない。
だから男はオレの連絡先を知ってても、オレは男の連絡先を知らない。
間違ってもオレから連絡する事なんか無いし、するつもりもさらさら無い。
だから携帯に連絡先を登録をしようとも思わない。
求められたら応えてやる、ただそれだけ。
相手が誰であろうと、そこに恋愛感情なんてものは絶対に無い。
むしろ愛だの恋だのとそんなものはただの幻想にしか過ぎない。
人間の三大欲は食欲、睡眠欲、そして性欲とはよく言ったもんだと、こんな事を言った奴をオレは珍しく褒め称えてやりたくなる。
「ま、考えた奴は随分欲に従順だったんだろうけど」
そう考えると、何だか馬鹿げた話だ。
そんな事を考えている内にタクシーはオレの住んでいる無駄に馬鹿デカい屋敷に着いた。