(サラダ設定)


 いくら星に願ったところで、海賊王になれるわけでもなければ、沢山のサラダが降ってくるわけでもない。それでもきっと、星に願いを託すのだろう。


「…チョッパー、楽しい?」

 風呂場に浮かべたプラネタリウムが電気を消した真っ黒な風呂壁一杯に銀河を散りばめる。胸に抱いたチョッパーはキラキラとした瞳を向けていて、可愛くて後ろから頬を突ついてみる。
 嫌々と手で押し込められて残念とだけ呟いてチョッパーの頭に顎を乗せ自分も人工の星々を観察する。
 そういえば、今日は七夕とかいう日だった。昔はエースとサボと短冊の書き合いをしたっけ。人の分まで書きまくったな。そんなことに思いを馳せてくつりと笑うと不思議そうにチョッパーが見つめてきた。
 何でもないよ、と、頭を撫でて湯船から出た。


「ルフィルフィ、俺な、俺な、短冊書くんだ」
「へ?」

 チョッパーの頭と身体をタオルで拭いている途中でそんなことを言われて驚いた。頭の中がだだ漏れになったのかと思って少し焦った。

「ウソップが、風呂上がったら書こうなって、いま、ささ?用意してるって」

 七夕ってなんだか知らないけど楽しそうだぞ。と、チョッパーはニコニコと笑った。願い事も決まってんだ、と、チョッパーは大張り切りでズボンを履き始めた。

「願い事…かあ」
「三つまでいいぞって言ってたぞ?」
「三つも?」

 くすくすと笑って一緒に風呂から上がると目の前の笹の葉がカサリと鳴った。

「どーだ!笹の葉でかいだろ〜!」

 ウソップが嬉しそうに笹を抱えてくるくると回っていた。チョッパーは走り寄り一緒に回り始めた。笹の葉がカサリカサリと耳の端で鳴って気持ちがいい。 瞼を閉じて塩の香りと笹の葉擦れの音に耳をすませているとズイッと目の前に短冊が差し出された。

「ルフィも三つまでな」
「え、あ、うん」

 色とりどりの短冊を手にしていつもの場所に腰掛ける。

「ねえ、サニー、なんて書いたらいいと思う?」

 腰掛けたサニーの頭を撫でて膝を抱える。答えは当たり前に無くて、煌めく星々を見つめた。書いたところで自分で叶えなければならないのが海賊王になること。書いても書かなくてもお腹いっぱいのサラダは物理的には落ちてはこない。それでもそれ以外には自分の頭を占めているものが無くて、大人しくその二つを書いた。ならば、あと一つは。自分の頭を占めているものがあと一つあるのなら。なんだろうか。

 本当は、すぐに浮かんでいた。それでもすぐに書き始めるのは何だか釈で、十分に時間をかけて書いてやった。叶うならば海に千切って捨ててしまいたい。そんなことはしないけれど。
 皆と一緒に笹に飾って、美味しいご飯を食べて、宴会をして、見張り台に登った。チョッパーと一緒の見張りだったけれどチョッパーは間違って飲んだお酒のせいで動けなくなっている。今日は一人での見張りだ。チョッパーには悪いけれど、一人でいたい気分だった。見張り台はゾロの筋トレの場所だからか少し汗臭い気がする。窓を開けてナミにもらった消臭剤を部屋に霧吹きでかけて、窓から顔を出した。
 ポケットの中にいれておいた短冊を手に取る。少しの皺を指先で撫でて、文字を指で辿る。風に靡いて手を離せば飛んでしまいそうだった。

「ささのは…さらさら…」

 ルフィは星を見上げながら鼻歌まじりに歌い始める。
 3人でよく歌ったっけ。結構覚えてるもんだな、なんて思って少しだけ笑った。

「会いに来い…バカロー」

 パッと手を離すと短冊がヒラリと風に乗った。

「ROOM」

 聞き覚えのある声が聞こえて、短冊が光に包まれて無くなった。

「会いにこい!バカトラ……って、誰のことだよ…つーか、きったねー字だな」
「あ…え……トラ男?」

 見張り台のドアに凭れて長い指の間に挟んだ短冊を振りローがにやりと笑った。ルフィは振り返ったまま固まったように動けなくなった。

「三つの願い事の中にこれがあるなんて…意外だった。なあ、麦わら屋?」

 つかつかとブーツの底を鳴らして近づいてくるローに引き寄せられるようにルフィは抱き着いた。短冊がひらりとローの手から落ちる。

「望み通り、会いに来た、」
「ずるい…」
「あ?」
「ずーるーいー」
「だから何が」

 ルフィはローにかがめと催促した。ローはめんどくさそうにゆるりと腰を屈めルフィに顔を近づけた。すかさずルフィは首筋に腕を伸ばし、ローの耳元で小さく囁いた。その後すぐにローは耳に手を当てバッと離れた。
 ローの頬が些か赤いのを確認するとルフィはしししと笑顔を向けてもう一度、今度は大きな声でローに言った。



歌唄いの願い星

「トラ男大好き!」
「………俺の願い事一個叶った」
「…トラ男って案外ちょろいのね」
「…うるせえよ」




(130707)
初!サラダちゃん!
そういえば七夕だったなと。
間に合ってよかった。
グダグダでおわってしまえ。

壱汰

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -