(オリキャラ注)

 忘れているわけではない。この広い海からあいつを探しだすことすらもはや奇跡で、ただ単にそれを既に諦めているだけだ。


副流煙にて間接正犯


「船長、他にも方法はあると思いますけどねぇ」

 シャチは持っていたモップをトントンと肩に当てながら呆れた様に言った。ローは眉間に皺を寄せながら、うるせえとだけ応えると目の前の二枚残った一枚のトランプを引き、自分の手持ちに加えトランプの山に投げた。

「勝てねええ!船長イカサマしてねーっすか!」
「お前にイカサマなんてする必要もねえよ」

 ローはソファーに凭れて手をクラゲに差し出した。クラゲは渋い顔をしつつもローにくしゃくしゃになった煙草の箱を手渡し頬を膨らませた。18の男が頬膨らませるんじゃねえとシャチはクラゲのフードを引っ張る。

「ひいいっ、やめっやめてシャチさん」

 クラゲは顔を必死に隠しながらフードを引っ張りジタバタともがく。いつもの光景に笑ってローは煙草の箱をくるくると指先で回した。

「これだけじゃあねえだろ、クラゲ」
「うーあー、船長のケチ!」

 ロー目掛けてクラゲはマッチを投げて寄越した。船長に何言ってんだとまたシャチに叩かれてクラゲは頭を抱えた。パシリとマッチを受け取りローはマッチを擦る。銘柄を見て軽いなと笑い煙草を咥え火をつけた。

「方法てなんのことっすかシャチさん」
「あー、…愛を伝えるには方法が沢山あるんじゃないですかーって話ですよねえ?船長?」
「くだらねえ話はやめろ……浮上するぞ」
「はいはい、…浮上ーっと」

 ローは煙を吐き出しながら席を立ち、外と中を阻む大きなドアの横に背を預けた。忙しなくベポが外だ外だとドアに貼りつくのを横目で見て、配線の剥き出しになった潜水艦の天井に紫煙が緩々と揺蕩うのをボンヤリと見つめた。するとベポが汗を拭いながら不思議そうにローに声をかけた。

「キャプテン、珍しいねえ、煙草なんて」
「ああ、たまには、な」

 ベポは不思議そうにまた頭を傾げるが、海上に出たことを告げるアナウンスが聞こえた瞬間、ハンドルを捻り始めた。

「キャプテンも外でる?」
「ああ、ベポ…俺はしばらく外にいるよ」
「アイアイ、キャプテン」

 太陽の陽射しに眼を細めながらもローは駆け出したベポの後を追い外に出た。

「トラ男!」

 まだ陽射しに慣れない眼が映す幻覚と、暫く潜水艦に篭っていたための幻聴か。ローの目の前にはベポに抱きついた麦わら海賊団のルフィがキラキラとした笑みでローを迎え入れたのだ。ベポから離れローのそばまで掛けてきたルフィに未だ疑う様な視線を向ける。

「……幻か?」 
「…殴ろうか?」
「いや、いい」

 にっこりと笑顔を向けて拳を掲げたルフィにローは手を上げてそれを制した。

「トラ男、お前人にダメだって言ったのになに自分は吸ってんだ」

 暫く何のことを言われているのか分からなかったが、ローはこれのことかと、口に咥えて灰が溜まった煙草を手で除けて、灰を落とした。

「俺は、お前んとこのコックの副流煙に気をつけろとはいったが」
「屁理屈こねるな」

 ぷくりと頬を膨らませたルフィを見てローは苦笑いして、宙に紫煙を吐きだし、未成年の船員から奪ったんだと伝えた。

「船員の身体気遣うなんて、そんなにいー奴だったっけ?」

 手摺りに飛び乗り海の方に足を投げ出し座るルフィに怒ることはせず、ローは煙草を持っていない方の手をルフィの腹に回し手摺りを掴み、自分は背を手摺りに預けた。ルフィはローの腕に手を添えて満足そうに笑んだ。

「いや、吸いたい気分だったんだ」
「珍し…」

 こちらを向いたルフィにローは顔を近づけて額を合わせた、ルフィの麦わらの帽子は黒い髪を滑り、紐のおかげで首に引っかかった。いつだったか船員に紐をつけてもらったから飛ばねえんだと嬉しそうに笑っていたのを面白くないなと千切ろうとして、暫く口を聞いてもらえなくなったことを頭の隅で思い出しながら、ルフィの真っ黒な瞳を覗き込んだ。息を詰めたルフィに気を良くしてローはルフィにふうっと煙を吐きかけてやった。

「んぐっ…げっほげほげほっ」
「…副流煙のほうが身体に悪いと言っただろ?」

 くつくつと喉の奥で笑うローを涙目で睨みながらルフィはローの白い帽子を掴んで、自分に被せた。そしてローの腕の皮を抓る。

「はは、いてえ」
「今日は何の日だよ、折角宴抜け出してきたのに、帰るぞ」

 そうルフィが少し怒気を含んで言うと、ローは悪いと呟きルフィの腰を掴み引き寄せた。片手で煙草を消してルフィの唇に触れるだけのキスをする。ルフィは驚いたように眼を見開いたが、しょうがないなあと呟いて瞼を閉じた。ローは口角を上げたままルフィの唇を食み口腔に舌を忍ばせ、絡めとる。

「ん…煙草味…」
「大人になったんだろ、」
「…そっか」
「おめでとう」

 ルフィは驚いてローを見つめ、照れたように表情を固くしたローの首にぐるぐると腕を絡めてキスをした。

「しししっ…嬉しいな」
「…ああ」

 またローが顔を近づけようとした途端、ドアが大きな音を立てて開いた。何事かとそちらに顔を向けて、ローは困った様に髪の毛をかいた。

「麦わらー!誕生日!おめでとうー!!」
「!!…おう!」

 雪崩になったまま船員達がニヤニヤとした顔を向け、手には食料を持っていた。それに反応しない訳はなく、ローが腕を離した途端船員達のところに走っていった。自分の帽子が揺れるのを見ながら、ローはもう一度煙草を取り出し火をつけた。揺蕩う紫煙を見つめながら、唇に指の腹で触れる。

「愛は伝えられましたか?船長、」

 隣に凭れたペンギンが酒の入ったジョッキを手渡してくる。受け取り、そのままずるりと甲板に座り込んだ。

「お前らは、俺に甘すぎる」
「船長が自分に厳しすぎるんですよ、それに、俺らも麦わらに会いたいですからね」

 そうかとだけ呟いて、両手に肉を持って此方に走ってくる今日の主役を甘やかす算段を考えることにした。


5/5 HAPPY BIRTH DAY LUFFY!!!!!!!



(130506)
お誕生日おめでとうルフィ。そして一日遅れたごめんね。
ハートにお呼ばれしていたルフィたんのお話。ハートはローを甘やかすんだろう。
オリキャラでてきましたね。すみません。また詳細あげたいなあ。
※フリーだったり。

壱汰
 

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