パンクハザードで俺を呼ぶ奴の曇りの無い胡散臭いほどの、笑顔に吐き気を覚えた。もう、笑えやしないんだと、思っていたのに。奴はいとも簡単に俺に笑顔を向けてきた。胸糞悪い。


ROOL


 船長会議だからと二人きりになった船首でルフィは特等席だと手を伸ばしてサニー号の頭に腰掛けた。その下側にローは腕を組んで凭れた。お互いに背を向けた状態で、風の音と波の音だけ耳に響いた。沈黙を破ったのは、意外にもローの方だった。

「泣いてるのかと思った」
「…まさか」

 意外にもすぐに返事が返ってきてローは戸惑った。次の言葉を用意していなかったのだ。むしろ、なぜそんなことを口走ったのかも分からなかった。
 ルフィはしししっと笑いローの横に来て腰掛けた。二年間も泣いてたら、干からびるだろと下からローを見上げた。ローはルフィと目を合わさずに目の前の舵を睨み付け、茶化すなと吐き捨てるように言葉を投げた。そんなローにルフィは麦わら帽子のつばを指先で引っ張りごめんと呟いて、帽子を深めに被った。

「俺といれば、お前は嫌でも思い出すだろ」

 何故、同盟を結び俺を船に招いた。その言葉は出かかってそのまま咽喉に引っかかった。それを分かっていて同盟を持ちかけた俺は一番胸糞悪いなと鼻で笑った。いや、見たかったのかもしれない。仲間にも誰にも見せられないこいつの隠れた痛みを。知りたかったのかもしれない。とんだ茶番だ。
 ローは空を見上げてゆるゆると漂う雲を見つめて息を吐き出した。

「お前は俺を生かしてくれた」
「気まぐれだ」
「そう、その気まぐれに俺は生かされたんだ」

 いつの間にか自分の目の前に立っていた麦わらに俺はたじろいだ。あの笑顔だ。怯んだ俺の手を掴み引っ張る。指先が手のひらが温かい何かに触れてドクリと鼓動を打った。鼓動を打ったのは、麦わらの、心臓だと気付いた時には大分に時間がたっていた気がする。

「あの日あの時、俺はお前に生かされた、そして、お前は俺を生かした…そしてまたお前と再会した」

 指先から身体中に巡る心音が俺の心音と重なっては別のリズムを刻み、重なる。

「お前が生かした心臓だ、責任とれよ」
「…は」
「俺をこの世界に留めた責任だ」

 重てえだろうと、屈託無く笑うルフィにローは暫く反応することができなかった。そして思い出したように咽喉の奥でくつくつと笑い、違いねえなと呟いた。

「同盟組めば、お前は俺をみとかなきゃなんねーだろ?俺はお前をみとく…保険だ!」
「……へへ……悪かねえ」

 この男は意味がわかっているのだろうか、そんなことを思いながらもローは笑いながら空を仰いだ。吐きそうなくらいの晴天で、風がふわりと舞う。理由もなくまた笑いが込み上げた。笑っていたい気分だった。



(130421)
俺はパンは嫌いだ辺りのロール?
ポルノのROOLはロールだとほんと思うんですよねおいしい。
俺を見届けろという互いの保険が同盟ならいーわねと。そんなロール。
ロール書くならROOLで絶対書きたいと思ってたから満足。


壱汰

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