俺のものになった途端、俺はお前を殺すだろう。堕ちるお前は面白くない。
世界かアダムか
低血圧なこの男に腕枕なんてされているところを仲間にみられたら、と、思うが、きっと察しのいいできたクルーは見て見ぬ振りをしてくれるのだろう。少しだけそれが面白くてクツリと喉の奥で笑って、目の前で寝息をたてる部屋の主の深く刻まれたくまを指先で撫でた。
するりと頬を滑ると、手を掴まれ引き寄せられた。掴んできた指先が冷たくて鳥肌がたった。両腕でグイグイと胸元に押し付けられて笑いが出た。
「ぶひゃひゃっ…なに、甘えてんのかトラ男」
小さく耳元で寒いと呟いたのがまたおかしくて笑う。
「寒いとこ育ちだろお前〜」
関係ないだろうと首筋に顔をうずめて背を滑り降り腰に腕を絡めてきた。ぞわぞわとした甘い痺れが腰を擽る。この手に触られるといつもこうだ。不思議。
「お前は、俺のものになるのか」
唐突に投げられた言葉。どういう意味だそりゃ。わけわからん。とは、すぐには言わず黙ってローの髪の毛を撫ぜた。
「俺は俺のものだろ」
お前とのセックスは気持ちいいけどな。と、付け加えると首筋に舌が這って犬歯をたてられた。
「いっでぇ!!ばっか!」
「色気がねえ…」
色気なんて状態じゃないふざけるなと胸元に腕を突っぱねる。漸く目にした起きているローはやっぱり目の下にくまを携えていて、笑った。
「っあー…馬鹿野郎…血ーでてる…吸血鬼かお前は」
「なんだそりゃ」
「吸血鬼だ……じゃなくて、お前は囲われる俺をみたいのか?」
ローの瞳を覗き込む。揺るがない瞳が好きだとは思う。愛しいと、言葉にするのは簡単だ。でも、それじゃあ途端にちっぽけになる。どうせなら奪うのが海賊だろう?
「いや…お前が、俺のものだとでも言ったら…殺してやろうと思ってた」
「なんだそりゃ」
「俺にも分からん」
「おっかしーな、トラ男は。おまけにめんどくせー」
今頃気づいたかとまた腕を伸ばしてくるローからすり抜けてシーツから出ようとするが、腕を掴まれて視界が反転した。またシーツへと逆戻り。冷え性の指先も主の脳が起き始めたのを察したのか温かくなっていた。
「…トラ男……俺、オシッコしたいんだけど」
「…ここでしろ、」
「なっに馬鹿なこと言ってんだ馬鹿」
「…ばかばかうるせえ…もう少しで脳が完璧に覚める」
それまでここにいろ。骨が軋むほど抱き締められる。なにを甘えているのだろうか。自分勝手な男だ本当に。
目の前にある逞しい胸元に手をつき首筋にローと同じように舐めて犬歯をたててやった。
どちらを選んでも楽園は追放されるらしい。なら自分を選ぶまで。ブワリと香る血の匂いとともにローに抱きついてやった。
(130401)
ロール処女作がこれだ、と。
毎度毎度言いたいことが分からない話にかわりはない。
アダム=外科医
世界=旅?
壱汰