雪の女王 [7/7] 秋都の視線を受けた凛はいつもの調子で、軽い笑みを作っている。 「俺は報告があるから帰るぜ」 「……せっかくですし、家に寄ってくださいよ」 「お前、学校は?」 「サボれって言ったのは、凛さんですよ」 様々な事情が重なり、秋都は逃げるようにして実家を出てきた。凛には挨拶もして来なかったが、心配してくれていたのだ。 そして、秋都の為に身を投げ出して鵺に飛び掛かってくれたユキへ視線を向ける。いつ負ったのかわからないが、右足に小さな傷が出来ている。 「ユキ、怪我は?」 『こんなものは怪我に入らないよ』 「おい、茶は出るんだろうな」 『アキ、私には饅頭だ』 「ワンコが饅頭食べていいのかい?」 連れ立って家路についた秋都は、一瞬だけユキと凛に視線を向けた。 ――強くなろう。 今の幸せを守るために、壊させないために、強くなりたいと思う。 白い女王に相応しいくらいに。 気高く孤高な魂に寄り添えるくらいに。 朝から大変だったが、たまには早起きも良いかもしれない。そう思えた自分に、秋都は笑顔を作った。 戻 [*prev] | [next#] |