雪の女王 [3/7] 「それで、何の用ですか? これから学校なんですけど」 「どうせ遅刻だ。サボれ」 「大人の言うセリフとは思えません」 「言うようになったな。冗談は置いといて、仕事だよ」 仕事とはつまり、妖怪退治だ。 蓮城の家は代々妖退治を生業としてきた家系である。秋都はまだ見習いの段階で、修業の一環としてこの町に来た。三年間町で暮らしながら妖退治をするようにと言いつけられている。 「嫌です。凛さんとの仕事にいい思い出はありません。一人で行ってください」 「お前な……」 これまでにも何度か一緒に仕事をしてきたが、凛の放った術に巻き込まれるは、妖から逃げるために囮にさせられるはで、良い思い出はない。 「この町はお前の管轄だろ。場所は五ツ橋にある廃寺だ」 「……お寺があるなんて知らなかった」 「なんだ、もうちょっと探検しろよ。新しい土地に来たら探検するのが男のロマンだろ」 「凛さんの基準でものを言わないでください」 「つれないな。まあ、いいか。その地域に住む人の何人かが、謎の高熱におかされているらしい。障気に中てられたんだろうな」 口調は軽いが、人に被害が出ているということは状態がかなり進行している証拠だ。早急に手を打たないと被害者はどんどん増えるだろう。 「お前、制服のままでもいいだろ。さっさと行って片付けるぞ」 「わかりました」 秋都は愁傷に頷いて見せると、凛を先導するように本日二度目になる坂道を下り始めた。 戻 [*prev] | [next#] |