雪の女王
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「…………」
「窓開けておかなきゃこうなんだろうな」

軽快にガラスを割ってきた秋都の相棒は、主の命に従い秋都の手の中へと納まった。それは全てが純白の、悪しき者を退ける力を有す退魔の刀。

「学校は遅刻だし、朝から凛の顔なんて見なきゃなくなったんだ。責任は取ってもらう」
「お前、本人の前でそんなこと言うなよな。俺のガラスのハートが傷つくだろ」
「……凛さんが来るといいことないんですよ」

抜き放った刀身は秋都の力を受けて淡く光りだす。一つ目を睥睨したまま、右に体を向けて剣先を後ろに下げる。

「陽の構え、退魔の一閃『こなゆき』」

集中力が極限まで高まると同時に雪白を振り上げる。刀身から生じた霊力の刃は、動けない一つ目に容赦なく襲いかかり、触れた部分から一つ目の身体を霧散させていく。
粉雪の名を冠したこの技は、触れたものを文字通り粉のように消滅させる。
一呼吸後には、何も残っていなかった。

「上出来だけどな、あんな小物、片手でペイッと払えるようになれよ」
「自分だってそんなことできないじゃないですか」
「俺はできるけどやらないんだ」

当然といわんばかりの表情の凛に、秋都は思わず頭を抱えたくなった。
こう見えて凛は、秋都の父の弟子として修業を重ねた、一応は優秀な術者だ。言動が軽い性格なので、とてもそのようには見えないのが残念極まりないが。





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