雪の女王 [2/7] 「…………」 「窓開けておかなきゃこうなんだろうな」 軽快にガラスを割ってきた秋都の相棒は、主の命に従い秋都の手の中へと納まった。それは全てが純白の、悪しき者を退ける力を有す退魔の刀。 「学校は遅刻だし、朝から凛の顔なんて見なきゃなくなったんだ。責任は取ってもらう」 「お前、本人の前でそんなこと言うなよな。俺のガラスのハートが傷つくだろ」 「……凛さんが来るといいことないんですよ」 抜き放った刀身は秋都の力を受けて淡く光りだす。一つ目を睥睨したまま、右に体を向けて剣先を後ろに下げる。 「陽の構え、退魔の一閃『こなゆき』」 集中力が極限まで高まると同時に雪白を振り上げる。刀身から生じた霊力の刃は、動けない一つ目に容赦なく襲いかかり、触れた部分から一つ目の身体を霧散させていく。 粉雪の名を冠したこの技は、触れたものを文字通り粉のように消滅させる。 一呼吸後には、何も残っていなかった。 「上出来だけどな、あんな小物、片手でペイッと払えるようになれよ」 「自分だってそんなことできないじゃないですか」 「俺はできるけどやらないんだ」 当然といわんばかりの表情の凛に、秋都は思わず頭を抱えたくなった。 こう見えて凛は、秋都の父の弟子として修業を重ねた、一応は優秀な術者だ。言動が軽い性格なので、とてもそのようには見えないのが残念極まりないが。 戻 [*prev] | [next#] |