Review
8:漆黒のリベリオン


著者:和倉眞吹様
HP or 作品直通:円幻の館
ジャンル:史実ベースアクション


 02/26時点での更新分まで読ませて頂きました。(内通疑惑6頁目まで)

 堅実な描写で丁寧に書かれていたため、アクションものという定義でありながらも地に足のついた文章で安心して読み進められました。垣間見える陰謀が醸す緊迫感と戦闘の躍動感、そして舞台がドイツということでとても楽しかったです!

 史実と絡めているため解説する箇所が多いのは仕方のないことですが、序盤、特に序章の教官が登場する手前辺りが少々、長いように感じました。他の箇所は特に突っ掛かることもなくすんなり読めました。
 文章に関することで他に気になったのが、地の文で書いたことを会話を挟んで繰り返していたり、同じく地の文で書いたことを台詞として再起しているように見えたことです。印象付けや強調として使っているのやもしれませんが、その回数が多いように思えて私は少ししつこいかなと感じてしまいました。

 登場人物関連で気になったのが、ヘルシェルさんとエレミヤさんとポールさん、ハンネスさん辺りです。
 ヘルシェルさんが序章でフルネームだけ出されて、それっきりであるということ。放置されているので後の重要人物になりそうな、ならなさそうな、そんなもどかしい感じがしました。
 重要人物と思しきエレミヤさんは、序章で存在は仄めかされているものの、名前が実際に出たのが二章だったので気になりました。もし見落としていたのならすみません。
 三章登場のポールさんは、過去のエマヌエル君との関わりが特に描写されないままだったので、ただエマヌエル君の揺さ振りと情報の提供で死んでしまったように見えて少々寂しかったです。
 ハンネスさんで気になったのが、彼もまた名前の登場が遅かったことと、序章での役割が脅しと情報提供で終わっていたことです。誰かしらでナチス側の動きをもう少し透明化すると、良い感じに複雑な伏線の絡み方になると思うのですが、如何でしょうか。

 あと、アリシアさんで気になったのが、彼女が本音を吐露する時、ちょっとあっさりしているように思えたことです。
 吐露する前にもうちょっと間を持たせる感じで書くと緩和されるかもしれません。
 そして、一章でザレラさんが登場した時、彼女の描写が比較的あっさりしていたことですね。一章は他の章に比べて場面転換が多いので、それで彼女の印象が薄く感じてしまいました。

 文章関連では、誤字などはあまり気にしていなかったのですが、序章5頁の『人影のない場所』、序章6頁下部の『教官して』これらが目に留まりました。恐らく誤字だと思います。

 構成関連で、前述の通り一章の場面転換が多い印象を受けたので、エマヌエル君が保護されてからの後半部は二つくらいの場面で書ききっちゃうのもありではと思います。
 五章でリストゥール伯爵邸がぽんっと出てきていますが、リストゥール伯爵の名前自体は五章で初めて出ているものだったと思うので、補足が欲しいと思いました。
 あと、同じく五章のノートンさんですが、唐突に登場したように映りました。アリシアさんと一旦どこかで会わせてから登場させるのもありかもしれません。

 ゆったりめのリズムと戦闘のテンポの良さの使い分けが巧みで、物語の波に乗りやすい小説だと思いました。回りくどい地名の解説から入らないのも読みやすくて、ドイツに興味がない方でも楽しめると思います。
 私情ですが、ちょっとツンデレなエマヌエル君、飄々としているザレラさんが特に大好きです!

 以上になります。ここまでご拝読頂き有難うございました!

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