一つ一つの描写が緻密で、小説を読んでいるというよりは物語を眺めているような気分になれる小説でした。 完結した作品ではないようなので、敢えて回収していないと思われる伏線等には触れずに書かせて頂こうと思います。 まず、「おねがい」に書かれていたものから、僭越ながらお答えさせて頂きます。 たいていの項目に書かれていたことは伝わってきました。ですが、初見で全ての項目に気付くことが出来るかと訊かれると、難しいようにも思います。 読んだ万人に伝わると思えるのは、3の「ウォンという師匠がいる」くだりと、10の「斎藤という人が既に死んでいる」くだりだと思われます。 グレゴールさんの章に関する項目は、8以外は伝わってくるものの、印象が薄いように感じられました。8の「病人のエーファの指輪」のくだりは、5〜7に比べるとさらに印象が薄く、「エーファ」についてのくだりがかなり少なかったような印象を受けました。エーファさんの名前も本文中に出ていなかったような気がします。単に読み落としているだけかもしれませんが……。 次に、「おねがい」の下部に書かれていたことです。 グレゴールさんの章ですが、テオさんとのシーンを削るのではなく、シモーヌさんとのシーンがもう少しあっさりする方が私は好みだなと思いました。 「永遠の夕暮れ」を冒頭に持ってきた場合ですが、読んだ印象では、確かにインパクトは弱いですが、「名前のない」が冒頭である時に比べると取っ付きやすいもののように感じました。ただ、世界観(場所や時間等)が曖昧なので、もし冒頭にくるなら補足が欲しいなとも思います。 全体の印象ですが、何回も推敲なされているのか、ギミックに富んだ文章は飽きが来ません。勉強になりますし、地の文だけでも心打つ何かがありました。 しかし、熟考を重ねた文章だからこそか、時折苦しげな部分もあったように思えます。肩の力を抜いて書いてみて下さい。ライオンOL様の文章は好みなので、非常に勿体なく感じました。 特にその印象を抱いたのは「名前のない」と「狭間に浮かぶ」でした。 以下、個人的に感じた細かい印象に触れさせて頂きます。話半分に読んで頂ければ幸いです。 ・全体的に、「〜る」や体言止めの語尾が多かった印象があり、つっかえつっかえになってしまう部分がありました。 ・P2の「真空を思わせる」ですが、読んだ際に違和感を感じたので、もうワンクッション欲しいと思いました。 ・P3の月に関する描写ですが、満月のすぐ後に新月の描写も入れていて一瞬分かりにくかったので、これもワンクッション欲しいと思いました。 ・P9〜11の間に、七十三番さんの名前がころころ変わっています。特に、一回しか出ていないP10の「キティ」には違和感を覚えました。 ・P18〜19に出てくる「お母さん」という台詞ですが、個人的にはもう少しバリエーションが欲しいなと感じました。 ・P20のアンティークドールですが、飾り暖炉のどの辺りにあるのか、少し分かりにくかったです 三つの章がどのように絡んでいくのか想像できず、続きが非常に気になる作品です。 現代物なのにある種の世界観が確立していて、読めば読む程味が出る好奇心くすぐられるお話でした。こういう作品は初めて読みましたが、かなり好みです! 以上になります。ここまでご拝読頂き有難うございました! |