Review
5:アーティチョーク


著者:近藤様
HP or
作品直通:アーティチョーク
ジャンル:社会派ミステリー


 タイトルからは一見どのような物語であるか想像がつきにくいですが、イタリア好きな私には堪らない作品でした。
 たったの数日の出来事だと感じさせない濃密さは、登場人物達が体感している時間を読者にも感じさせてくれます。そして、所々交えられているイタリア語がエッセンスとなり、物語に一風違う深みを持たせているように感じられました。
 用語解説も簡潔に付け加えられており、一つ一つ納得しながら読み進められました。
 とはいえ、説明もなくさらりと流されている単語もあり、慣れるのに少々時間を要しました。例えば、車のフィアットや拳銃のベレッタですね。名前だけは聞いたことがあるのでそれ程躊躇うことなく読み進められましたが、全く覚えのない方には多少難しく感じられるのではないでしょうか。それが読者層を狭めているように感じて、勿体なく思いました。
 そして、物語の性質上仕方のないことですが固有名詞が多いように感じました。

 欲をいうなれば、もっと五感全体でイタリアの雰囲気を味わいたかったです。勿論文章を通してですが、現地に赴かずとも行ったような気になれるのが小説の利点ですので、少し物足りないような気分になりました。

 史実に絡めてストーリーを進行させるのは非常に良かったです。ムッソリーニの死刑に揺れるシチリアの様子から、バルバッチャ・ファミリーの壊滅まで、事実に即して練り上げられた一連の流れはそれ程違和感がなく、思わず声を上げたくなる程でした。
 しかし、先程も上述させて頂きましたが「アーティチョーク」という花の名前単体の題だと物語がどのようなものなのか想像し難く、花言葉を知って初めて「ああ!」と納得出来るような代物です。
 作品をただ読んだだけでは少しもやもやが残ってしまうので、もう少しタイトルに関してはヒントが欲しかったなと思いました。

 しかし、史実に囚われ過ぎているようにも感じます。よく考えられている物語ですが、終わり方があっさりとし過ぎているような印象を受けました。それでいて、最初から登場していたレベッカさんが最後の最後で登場しないのも若干違和感を覚えます。

 とはいえ所々盛り込まれているジョークに登場人物への共感や愛着が湧きますし、非常に好みな作品でした。

 個人的な感想ですが、中盤をもう少し盛り付けてみると尻すぼみ感がなくなると思います。あと、ルチアーノの登場はもっと早くても良いのでは、と感じました。
 それと勿体ないことに脱字が物凄いありました。一度ワード等にコピペして文章の校正機能を利用すると簡単にチェックが出来ますのでお試し下さい。

 以上になります。ここまでご拝読頂き有難うございました! 

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