七つの大罪 | ナノ





Ruin


しんしんと雪の降り積もる夜だった。
重く厚い雲は重なり合い、月と星々を隠す。
まるで汚れた世界を清浄するかのように、静かに純白の雪が舞っていた。
街灯すらない路地裏の一角、世界とは隔離されているみたいに、漆黒に塗りつぶされた闇の中。
うずくまる幼い少女がいた。

頭上から舞い降りる、真綿のような柔らかい雪は手の中でゆっくりと消えていく。
手足はかじかみ、とうに感覚を失っていた。
震える指先に息を吐きかける。
うんと前に飲んだ、あの暖かいミルクから立ち上る湯気のように、白いそれは闇に溶け込んで一体となった。
ボロ切れのような服を纏う少女にとって、この寒さは厳しく、身を突き刺すようだ。
くすんだ金色の縺れた長い髪が地面を這いつくばるように広がる。
虚ろな瞳は何も映してはいなかった。


彼女は捨て子だった。
物心ついたときから、このゴミ溜めのような街にいる。
名前だけが彼女の手掛かりとなっていた。
自分の年齢も確かではない。
恐らく、自分は9歳ほどだろうとぼんやりとした認識だけだった。
両親の顔立ちすら知らない。
きっとろくでもない人達なんだろう、と他人事のように感じていた。


ぐう、とお腹が別の生き物みたいに大きな音を立てた。
体力を使わないように、体が少しでも温まるように身を縮めた。

おなか、すいたなぁ。

既に、彼女には食べるものが残されていなかった。
先日盗んだパン、大事に少しずつ口にしていた固く味気のないそれももう尽きた。
空腹感が彼女を苦しめたが、涙は出なかった。
貴重な水分を失うことは愚かだと理解していたし、なにより、空腹は日常の一部分でもあったからだ。


明日になれば、明日になればごはんにありつける。
だいじょうぶ。心配することはない。
今までだってやってこれたし、今更盗みなんてどうってことない。
だいじょうぶだ。

そう自分に言い聞かせて、彼女は眠りについた。




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