七つの大罪 | ナノ





ある日、彼と目があった。
その日は洗濯物が多く、シーツを干すのに戸惑っていた。
背伸びをして大きなシーツを掛ける作業は、彼女にとって少々困難である。
やっとの事で干し終え、ふっと息をついたその瞬間。
シーツがはためき、翻ったその向こう側。
彼がいた。
こちらを見て、緩やかに笑っている。
時が止まったかのような錯覚と、心臓が大きく跳ねるのを感じた。

彼が私を見ていたんだ。
全部、見られてた。
どうしましょう。どうすればいいの。

不安。しかしそれは杞憂に終わる。
彼が微笑んだのだ。彼女を見て。
細められた優く光る瞳。
緩く弧を描く唇。
小さなえくぼ。
彼女は自身の面に、熱が集まるのを感じた。
羞恥心に思わず俯き、彼女はそのまま逃げるように去ってしまう。
その後、すぐに自身の行動を悔いた。

やってしまった。あれでは、まったく失礼だわ。
どうしましょう。
でも、あの笑顔は私に向けられたものだった。

彼女の心に彼の笑顔が留まって離れなかった。

眺めているだけで満足だったはずなのに、沢山の欲が彼女を取り巻いた。

好き。彼が好き。
彼を知りたい。あの笑顔を見たい。お喋りをしたい。子供たちの頭を優しく撫でるあの手。私とは全く違う、あのゴツゴツとしたそれに触れてみたい。

少女は自身の感情をはしたないと恥じたが、止められなかった。
身を委ねるしかなかったのだ。




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