七つの大罪 | ナノ





Lily


無垢な少女は恋に落ちる。
それが全ての始まりであった。

彼女の住む村は素朴ながらも、決して贅沢が出来るほどではないが、それでも豊かな村だった。
森に囲まれた村は自然の恩恵を受け、次第に人の数を増やしていった。
唯一、他の村と変わっていたのは、村人皆が頭を覆うように布を巻きつけていることぐらいだ。

彼女は村での生活を好いているわけではなかったが、それなりには満足していた。
いつもと同じ日常。
刺激のない日々の繰り返し。
畑仕事や家事の手伝い、家畜の世話。
村の子供たちの相手と空いた時間の読書。
それが彼女の全てであった。

しかし、そんな日常は崩れ去る。
とある青年がふらりとこの村に現れたのだ。
突然のことだった。
彼を見た途端、彼女の小さなの体に衝撃が走り、天と地がひっくり返ったような感覚に襲われたのだ。


彼は旅人だった。
世の理を知る旅。
それが何を意味するのか彼女には分からなかったが、この村の日常とは切り離されていて、別世界を生きてきた人なのだということは理解した。
とても魅力的な響きだった。
暫くはこの村に滞在するのだと風の噂で聞く。

あの人が暫く此処にいる...!

そっと彼を垣間見ること、それが彼女の退屈な日常に華を持たせるのであった。
村の子供たちに旅の話をせがまれ、面白おかしく語る彼は輝いて見えた。
少女は彼の爽やかな笑顔と優しい性格に惹かれる。
ごく自然な事だった。


少女は青年に心を寄せる。
無垢な少女は春の訪れを知る。
それはまさに恋だった。
夢にまで青年が現れたとき、彼女はもう既に彼の虜になっていた。
彼を思うと胸が熱くなる。
しかし心地の良いその感覚に彼女は溺れた。




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テーマ「人外ファンタジー」
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