七つの大罪 | ナノ





彼は、一体何が起こったのか分からなかった。
深く突き立てられた短剣。
その思わぬ衝撃に、彼は彼女の首にかけていた手を反射的に放す。
彼女はその場で崩れ落ち、荒く呼吸を繰り返した。


「え...?」
彼は呆然と己の腹をみている。
滲み出す真っ赤な血は衣服に浸透し、大きなシミをつくってゆく。
彼は震える手で引き抜こうとしたが、身を裂く痛みに、全く力が入らなかった。
きらりと双頭の鷲の紋章が光った。


そして、呼吸を整え終えた彼女は、彼に掴みかかり、押し倒した。
彼の腹に刺さる短剣を一気に引き抜く。
飛び散った生暖かい液体が彼女の頬を、髪を、体を汚してゆく。
鈍く光を帯びるそれを振り上げて、彼の腹部に突き立てる。
何度も、何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も。

舞い踊る鮮血。
手に伝わる肉の感触。
痙攣し、痛みに喘ぐ彼。
歪んだ美しい彼の顔。
憎悪に染まる彼の瞳。
そして、その瞳に映るのは、憎悪に満ちた彼女の顔。
その様子を月と星々だけが見ていた。



夜明けがやってきた。
明けぬ夜はない。
いつの間にか月は沈み、白く燦々と輝く太陽が顔を出し始める。
相変わらず海は穏やかだった。
海波がキラキラと陽の光を反射させる。
光に満ち溢れた世界に一人の血塗れの少女が、愛しい人だったものを抱えて座り込んでいる。
少女の虚ろな瞳から、涙が一筋流れた。
抱えた肉塊の唇に、キスを一つ落として、彼女は己の腹に紅く汚れた短剣を突き立てた。


さあ 今旅立たん
輝く明日へ
希望で胸を溢れさせながら

さあ 今旅立たん
未知なる明日へ
誇り高き夢を抱きながら

さあ 今旅立たん
あの理想郷の先へ
さあ 今旅立たんー...


−fin−





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