七つの大罪 | ナノ





早くにベットに入った彼女だったが、目が冴え、なかなか寝付けなかった。雲が月を覆い隠していたため、窓からは月明かりが一切入ってこない。
彼女は闇に溶け込んで、自身の存在が消えゆくような錯覚さえした。

何度か寝返りをうった後、下に降りて水でも飲もうと考えた。
そっと床につま先をつけてベッドから降りた。
手探りでベットに隣接している小卓、その上に置かれている燭台とマッチに触れる。
蝋燭に火を灯すと、仄かな橙の光が鈍く辺りを照らし出す。
燭台を手に持ち、静かに部屋を後にした。
灯りを灯しているとはいえ、足元は薄暗い。
彼女は古びた床が軋まないように慎重に足を進めた。

階段を降りる手前、階下から灯りが漏れていることに気がついた。
まだ両親が起きていたのだ。
密かに話し声が聞こえる。
咄嗟に蝋燭の灯りに息を吹きかけ、彼女は身を潜めた。息を殺す。
いけないことをしているという背徳感が襲ったが、彼女は話し声に耳を傾けた。

「リリイは最近あの男に熱をあげているみたいだな」

父の重い口調に心臓が跳ねた。彼のことだ。

「そうですね。」
「今すぐに離れさせるべきだ!」
「声を荒げないでくださいな。あの子が目を覚ますでしょう。」
「...すまない。」
「きっと、リリイは納得しないでしょう。」
「外部の人間を入れてはならない。今すぐに追い出すべきだ。そうすればリリイも納得せざるを得ないだろう。」
「そんな強引なやり方...。まだ悪い人だと決まった訳ではありませんよ。」
「いや、彼奴は危険だ。もし、気付かれてみろ。私達はどうなる?リリイはまだ16だ。あの子にはあんな目に合わせたくはない。」
「...それは私とて同じ思いですよ。しかし、私たちだけで判断することではありません。」
「...そうだな。明日の夜にでも村長に相談しよう。早い方がいい」
「ええ。そうですわね。」


彼女はそっとその場を後にした。
この暗闇の中、どうやって自身の部屋に、ベットに戻ったか覚えていなかった。

彼が追い出される?彼が何をしたと言うの?
父さまと母さまがアランをよく思っていないことは知っていたわ。
でも、だってそんなの、おかしいわ。どうして、そんなことを。
それにあんな目に合わせたくはないって?
何があったと言うの?
父さまと母さまは何を隠しているの?
私には言えないこと?それは一体なんなの?

どうして、何故、という言葉が溢れかえり、もつれた毛糸のように彼女の頭の中でこんがらがる。
父と母の言葉が脳内で響く。響き渡る。
頭痛が彼女を襲った。体が震える。
抱きしめるように、腕を自身の体に回した。





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