七つの大罪 | ナノ





さあ 今旅立たん
輝く明日へ
希望で胸を溢れさせながら

さあ 今旅立たん
未知なる明日へ
誇り高き夢を抱きながら


歌声が聞こえた。
透き徹る歌声。
さらさらと清水が流れるように清らかなそれは、彼女の心に響いた。

彼女は村の近くの湖へと足を運んでいた。
特に理由は持ち合わせていなかった。
気晴らしに、と出掛けたのだ。
彼女は水際に腰掛けて、湖を覗き込む。
青く底知れぬよう広がるその様子に、吸い込まれそうだ。
そんな時だった。歌声が響いたのは。


きっと彼が歌っているんだわ。
直感的にそう感じた。
辺りを見回すと湖の淵に立つ彼の姿が小さく見えた。
そう距離は遠くない。

ああ、やっぱり!
彼だわ!

「アラン!」
彼女が声を張り上げると彼はこちらに気付いた。
そして、そのまま待ってて、そっちに行くよ!と大きな声で返したのだ。

「やあ。」
少し経つと、彼が森の茂みから顔を出した。
そして、彼女を見て目を見開いたのだ。
彼の唇が震える。

「どうかしたの?」
「いや、何でもないよ。」
すぐに彼は安心させるように、小さな笑くぼを浮かべた。
彼の動揺に疑問を覚えたが、何でもないと言い張る様子を見て、気に掛けないようにした。
「...邪魔しちゃったかしら?歌っていたでしょう?」
「おやおや、聴かれていたのか。」
彼がはにかむ。
「とても、綺麗だったわ。」
「ありがとう。恥ずかしいけど、嬉しいよ。」
彼はそう言って頭を掻き、眉尻を下げる。
そんな様子も、彼女には愛らしく感じた。
「どうして此処へ?」
「気晴らしに来たの。」
「僕もだ。」
二人で顔を合わせて笑った。


「今日は、布を巻いていないんだね。」
その言葉に、彼女はハッとする。
自身の頭に触れると、身につけなければならないそれの感触はなかった。
「ああ、忘れていたわ!」

あんなも両親から外へ出るときは、必ず身につけなさいと口すっぱく言われていたのに。
きっと怒られちゃうわ。

「とても、珍しい髪色だ。」
彼は彼女の髪を緩やかに梳きながらそう言った。
金色の髪は陽の光を受けて、星が瞬くように輝いている。
「そうなの?この村は皆んな布を巻いているけれど、金色の髪の人が多いし、知らなかったわ。」
「ああ、色々と旅をしてきたが、この髪色の人はなかなかいないよ。とても綺麗だ。」
彼の言葉一つで彼女の感情は左右される。
弄ばれる。
「ふふっ。顔が赤いよ。」
「だって、アランが急にそんなこと言うから!」
熱を帯びた頬を隠すように、彼女は両手で頬を包み込んだ。

「リリイ、こっち向いて。」
言われた通りに彼に顔を向ける。
予想外の顔の近さに、彼女は驚いた。
心臓が激しく主張する。
彼の降り注がれる眼差しに目を背けてしまうと、逸らさないで、と彼が彼女の輪郭を優しく撫でながら告げた。
彼の長い睫毛が細やかに震える。
すっと通った鼻筋。血色の良い唇。
こんなに近くで彼を眺めるのは初めてだった彼女は、その端正な顔立ちに息を飲む。

そんな彼女の様子に、彼は目を細めて、口付けた。
彼女もまた、夢にまで見たその行為を受け入れたのだ。
小鳥が啄むようなキスは、次第に互いを求めて噛み付くように、深いものへと変わっていく。
二人の吐息が混ざり合う。
蕩けそうなほど幸せだった。




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