「ほら、アリサこっちだよ」
「ま・・待って、ジオっ!!」
デザートのプリンをきっちり食べて、先日乗った黒塗りの車に乗ってやって来たのはこちらも先日やって来たイタリアの首都ローマ。車を降り、ジオは私の手を引いてスルスルと人混みを歩いてゆく。それに必死で着いていけば、大通りへと出る。こちらの方は物価が高く、高そうな装飾品や衣類を身に付けた人達が多く見られた。ギリギリの生活を送っていた私にとって、ここは初めて訪れる場所。
「ジ、ジオっ!!まさかここで買うの!?」
「?そうだよ。さて、まずは洋服から見ようか?」
「こんな高いところじゃなくても・・」
「あ、この店がいいかなー」
「聞いちゃいねぇ!」
ジオは、ぐいぐいと私の手を引っ張り店へと入るなり、店員さんを呼ぶ。店の中は、なんとも高そうな洋服がずらりと並んでいて、そのひとつのシンプルなワンピースにチラリと目をやる。えーっと、値段は・・・
『すみません』
『いらっしゃいませ、どうなさいました?』
『この店にあるもの全部・・』
「ジオさぁーーーーんっ!!!?」
ちょ・・値札に0が有り得ないくらい並んでるんですけどっ!?シンプルなワンピースがこの値段ってことは・・うん、きっと他はもっと高額なのだろう。それなのに、この店の全部って・・・
「い、いくらなんでも・・」
「金なら俺が出すし、大丈夫だぜ?」
「よ、余計にだめですって!!」
そう言えば、どうしてだ?と首を傾げるジオ。・・・どうやら彼の金銭感覚はおかしいらしい。いや、あんなに立派お屋敷に住んでるんだから金持ちなわけだし・・当たり前なのかもしれないけどさっ!!
『とりあえず、この店のもの全部ここに送っておいてくれ』
『かしこまりました』
「ほ、本当に買うの!?って、店員さんもいいんですか!?」
「・・?はい、勿論でございます。この方は・・」
『じゃあ頼んだぜ』
「え、ちょ、ジオ?待っ・・」
ありがとうございましたー、と深々と頭を下げる店員のお姉さん。ジオはくるりと振り返り、また私の手を取って店を出てそれからまた大通りを歩いてゆく。・・って、あれ?さっきのお姉さん、日本語喋ってなかった?
「よし、次は家具を見に行くか」
「へ!?い、いいよっ!!って、きゃあぁぁ・・・」
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「ジ、ジオ?こっちは下町の方だけど・・次は何を買うの?」
そう聞けばジオはにこっと微笑む。あれから次々と店に連れていかれ、あれやこれやと買っていったジオ。総額はきっと・・・恐ろしいので考えるのはやめておく。そしてやって来たのは大通りからだいぶ離れた下町。こちらはたくさんの人で賑わい、野菜や魚を売っているお店の人の声で活気づいている。
「俺のオススメのところだ」
「オススメ?」
「ついてからのお楽しみな」
そう言って私の手をぐいぐいと引っ張っていくジオに私は黙ってついて行くことしか出来なかった。
・・・若いな、この大人。