ひとりぼっちは嫌だと泣いている黒いワンピースを着た女の子。そんな女の子の頭をわしゃわしゃーっと撫でる背の高い男性。涙でぐしゃぐしゃの顔をそっと上げた女の子に、その男性はちいさく微笑む。

『もうひとりじゃないよ』

その言葉に女の子は、どれだけ救われただろうか?さらに泣き出す女の子に、彼は困ったな、とへらりと笑う。

『そうだな…あ、よし!元気が出る魔法を見せてあげよう』

触れたのは、やさしい色をしたちいさなひかり。そのぬくもりは今でもしっかりと私の中に灯っている。

あぁ、これは私の大事な大事な・・・







「・・・ーい」

「う、ん・・」

「おーい、アリサー?」

「んぅ・・・」

「・・3秒以内に起きないと襲うぞ?さーん、にー、」

「おはようございまぁぁぁぁぁす!!!?!」


何やら聞こえた恐ろしい彼の言葉に飛び起きればば、かなりの至近距離にいたジオは「なんだ、起きたか」と残念そうな顔をしていた。いや、なんつー起こし方をなさるのですかジオ様。


「ずいぶん幸せそうな顔をしていたが、いい夢でも見たのかな?」

「へ!?あ、まぁ・・ちょっと昔の夢を見まして」

「昔、の?」

「・・・あー、えーっと。あっもう用事は済んだの?」

「・・あぁ、さすがにもう朝だしな」

「あ、朝っ!!?だってここに来たのは、ひ、昼間で・・」


零れ抜ける言葉のわけは、窓から眩しいくらいに差し込む朝日。・・あぁ、黄色い小鳥が朝だよーと告げてるよ。チュンュン鳴いているよ。


「おはよう?アリサ」

「・・おはようゴザイマス」

「さすがにお腹空いたよな?」

「えっ、あ、私は大丈夫だ・・」

ぐうぅうぅぅ・・・

「「・・・・」」

「朝食用意してあるから行こうか?」

「・・・ハイ」


・・・なんでぇぇぇぇぇ!!なんであんなタイミング良く(悪く?)私のお腹は鳴るのよぉぉぉぉぉ…!!そもそも寝すぎだよ昼から朝まで寝るとかどんだけだよ。いつもならおじいちゃん並の早起きをかますのに。ベッドがふかふかだったからか?え、わたしそんな単純だったっけ?え?

そんなことを考えたところで時間は取り戻せはしないので、素直にジオの後ろをついていけば食堂へと辿り着く。すきなところに座って?と言われたので適当な場所に座れば、ジオは私の席へと向かいになるよう腰かけた。長いテーブルの上にはバターロール、サラダ、ベーコンエッグ、オレンジジュース、スープ、それと生クリームの乗ったプリンが並べられていた。朝から豪華だ・・やはり彼は金持ちらしい。いただきますと手をあわせてベーコンエッグを口にすればとても美味しく、それから黙々と食べていればジオが口を開いた。


「アリサ」

「?ふぁい」

「うまいか?」

「とってもおいしい!びっくりした!」

「毎日食べたい?」

「そりゃぁ食べれるなら食べたいですよねえ」

「そっかそっかそれはよかった。じゃあアリサは今日からここに住むことになったからな!」

「あ、うん。わかっ、た・・・・・・・・って、は?」


ちょっと待て。ジオさん、今なんと?いや、「そっかーよかったー」じゃなくてさ?なんか一人で凄い喜んでますけどっ!?なんとなく昨日のお屋敷案内から嫌な予感はしてたけどさぁっ!!


「そうと来たら、もっと必要な物を揃えないとだな・・」

「いや、」

「よし、これから買い物に行くか!」

「ちょ、」

「あ、あいつらにも説明しなくちゃだな・・まぁ、みんな出払ってるし、あとでいいかな」

「待っ、」

「よーし、レッツゴー!!」

「・・・(なにこれ帰りたい)」


(どうやら私に決定権は無いらしいです)

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