霧さんがランチに連れて行ってくれたのは意外にもちいさなカフェ。店長さんがとても気さくな人で、雰囲気も居心地もとても良かった。他愛もない話をして、食後に霧さんがブラックコーヒーを飲んでいる姿がとても絵になっていてその目の前でお砂糖たっぷりのミルクティーを飲んでいる自分がなんだか悲しくなったのは秘密だ。てか霧さんって何歳なのだろうか。完全に年齢以上の落ち着きがあると思うんですけど。

(…でもよかった)
もしお高いレストランだったら大変だった。テーブルマナーとかわからないし!!


食事を終え、そろそろ帰ろうということになり霧さんが呼んだ車を待っているあいだ、彼はわたしにいくつかの質問をした。家族構成や普段はどこに住んでいるのかなど、若干プライベートなことが続く中、次の質問だけは唐突なもので私は一瞬固まってしまった。


「"何故ボンゴレにやって来たのか"…ですか?」
「ええ」
「(…え、なになに!?ジオはなんにも話してないの!?)そっそれはつい先日なんというか突如起こった事件と言いますか…」
「本当にそうですか?」
「…え?」
「あなたはわかっていたんじゃないんですか?彼が、プリーモがボンゴレだと言うことを。わかっていて近付いた」
「え!いやあの、」
「あなたの目的はなんです?」
「いやいやいやちょっと待ってください!そ、そもそもボンゴレ、ってなんですか?」
「は……?」
「嵐さんも言ってましたけど…まっまさかボンゴレってジオの名字とか?」
「……」
「いやでもボンゴレって日本語で浅蜊貝のことですよ?ダサすぎる…」
「……呆れました、どうやら本当になにも知らないみたいですね」


わたしの言葉にちいさくため息をついた霧さんは一呼吸ぶん考えたあと、思いついたようにわたしの後ろ髪を軽く手に取り、指先に絡めた。……って、え!?ちょ、なにぃぃぃ!!?


「きっききききき霧すわあん!!?」
「(霧すわん…)確認なのですが」
「はっはい!!?」
「首の後ろ、すこし見せてもらえますか?」
「首の後ろ…?」


霧さんの手により、わたしの首元が露わになろうとしたそのとき。


「貴様、ボンゴレの人間だな?」
「!」
「えっ!?」


背後から何者かの低い声が通り、気付いたときには大きな爆発音と煙が辺りを覆っていてわたしの体は霧さんによって護るように抱きしめられていた。


「って、ええええええええ!?近ああああああ!!」
「ちょ、耳元で騒がないでください。潰しますよ」
「(つ、潰す!?目笑ってない!!)だ、だって…いったいなにがどうなって…!」
「…とにかく逃げますよ。ここで相手するのも厄介だ」
「に、逃げるって、」
「なにやってるんです、はやく掴まりなさい」
「はっはい!!」


もう一体なにがどうなってるの!!霧さんの手を取り、ただひたすらその背を追っていく。途中チラリと後ろを振り返れば、先程の男はしっかりと追いかけてきており、手には黒光りする銃を持っていたので血の気が引いた。

(なんなのあの人!なんでわたしたちを狙ってるの!?)


「もっ、だめ…ですーー!!」
「死にたくなければ足を止めないことです」
「死!!?」
「!危な…」

パァァン!

「…っ!」
「きっ霧さん!!」


乾いた高音が空気をふるわせた。
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