「おい」

「・・・」

「なぁ」

「・・・」

「おいコラ聞いてんのかガキ」

「ガ、ガキじゃありません!」


さっきから何なのだろうか。痛いくらいにじっと睨み付けてきたと思ったら今度はしつこいくらいに話しかけられる。ジオは「ちょっと用事があるから嵐といてくれな」と残し、私は今談話室に彼とふたりっきりなのである。用事ってなんなのだろうか?と言うかそもそもジオって何をしている人なんだろうか。そんな疑問はさておき、確かにすることはないし、沈黙は痛かったけどこうもトゲがある話しかけられ方をされたら返事をしたくなくなるのは当たり前だと思う。…思わず反応しちゃったけど。それに何て言うか私は嵐さんとはうまくやっていけない気がする、うん。


「お前日本人だよな?」

「え、いや一応イタリアの血も混じってますけど…」

「あ?ハーフにしてはお前・・」

「なっ、なんですかそんなジロジロ見ないで下さいソーセージ返して下さい」

「・・・根に持ってたのかよ」

「食べ物の恨みは怖いんですよ知らないんですか」

「・・・ははっ!」

「!」

「てめぇよくわかんねえな」


わ、笑ったーーーー!!!なんで!別にいまの笑うところじゃなくない!?よくわかんないのはあなたのほうです!ええ!間違いなく!


「・・にしても微妙な目の色以外それらしいところねぇな。顔立ちとかまんま日本人じゃねーか。・・・本当にハーフか?」

「ハ、ハーフですよ!よく間違われますけど…」

「まぁそれはいいとして、お前いつまでここにいんだ?俺は子供をこのままボンゴレに置いておくのは反対だ」

「ボンゴレ・・・?」


いきなり出てきた単語に疑問を浮かべれば、嵐さんがそれにぴくりと反応する。そして既にシワの寄っている眉間にさらに少しだけ深くシワを刻んで私へと視線を合わす。


「・・・おいお前プリーモが誰なのか知ってんだよな?」

「え?いや・・知らないですけど」

「じゃあここがなんだかも知らねぇのか?」

「と・・突然ジオに連れてこられたんでなにがなんだか」

「・・・・」


それっきり嵐さんは、先程以上に眉間にシワを寄せて何かを考えるように黙り込んでしまった。ところで、嵐さんはどうしてジオをプリーモと呼ぶのだろうか?ふとそんな疑問が頭に浮かぶ。いや、なんて言うか疑問だらけなんだけれど。
チッチッチッ、部屋には時計の秒針の音だけが響き、私はすることもなく嵐さんの次の行動を待つ。すると嵐さんは壁に預けていた体を起こし、スタスタと部屋の扉の方へと向かう。扉の前まで来た彼は、視線はこちらには向けずに言う。


「・・・とにかく早く出てけよ。ここはガキがいるとこじゃねぇからな」


ぱたん。扉が静かに閉じられる。すぐに出ていってしまったから言い返せなかったけど、言われなくてもすぐ出ていきますよ!…ただし、ジオが許してくれれば。


「…にしても、ひとりになっちゃったな」


嵐さんが出ていってしまった今、この広い空間には私しか居ないわけで、ひどい孤独感を感じさせた。まるで何かを思い出させるような…。だけどそれは有り得ないことで。だって私は今まで"小さなあの家で"過ごしてきたんだから。


「っ、…あれ?また頭痛いな…」


小さくズキズキと痛みはじめた頭を押さえて、ソファに深く沈む。あぁこのソファすっごいふかふか、やっぱりジオはお金持ちなんだと改めて実感する。痛む頭に響くのは一定のリズムを刻む時計音。先程までちょっとムカついていた嵐さんの存在が、なんだか少しだけ恋しく感じた。


『ボンゴレ』
それがひどく頭に残っている。

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