あのさ、どうしたらこうなるのかな?
「あそこが食堂、そっちは…そうだな、日本で言う大浴場みたいなところで、あっちは…」
「………」
あの後、もちろん私は彼にすぐさま断ろうとした。そう、断ろうとしたのだが「泊まるよな?」と言うジオのドス黒い悪魔のような笑顔に圧され、結局ちいさく「はい…」と頷くことしか出来なかったのである。ま、まぁ明日になれば解放される訳だしね!そう思っていたのだけれどナニコノ展開。
「さっきいた場所が皆が集まる大広間、あっちは資料室に書物管理室。で、突き当たりの部屋が執務室・・」
「ストォォォォォォップ!!ジオさんストーーーーップ!!」
「ん?」
スラスラと喋っていくジオの言葉を遮るように叫べば彼はどうした?と、ちいさく首をかしげる。・・いや、だからそれ反則だよやっぱりかわいよ萌えるよ胸キュンだよ……って違う違う!!なに惑わされてる(?)の私!!これまた一体どうして私はお屋敷を案内されているのかな!?百歩譲って前半は良しとしよう、問題はそのあとだ。明らかに後半は一泊するのには必要の無いものばかりなんですけど!?
「あ、あのですね!」
「よし!次はアリサの部屋を案内するな!」
「や、だから!」
「レッツゴー!!」
「………」
私の手を取り、ランランと歩き出すジオのあとを呆然としながらついていく。というか引きずられてる。あぁ、ダメだ聞いちゃいないよこの人。なんて言うかこの人といると疲れるよ。いやまだ出会って数時間しかたってないけどさ!毎日ジオと一緒に居る人大変だな…きっと苦労してんだろうなぁ……ていうかこれだけ屋敷の中歩き回ってるのに誰にも会わないんですけどもしかしてジオってこの広いお屋敷に一人で住んでるの?もしや呼べる友達とか居ないとか……
「アリサ、何か失礼なこと考えていないか?」
「いいいいいやァァ何にも!?」
「……まぁいい。ほら、ついたぞ?」
ぶんぶんと手をふって否定する私をジオは一瞬凄い冷めた目(ひどい)で見てから目の前の扉を開く。先にどうぞ、と言われたので入ってみれば、そこは小綺麗な部屋だった。
「…ここ、使っていいの?」
「あぁ。必要最低限の物はあると思うし、足りないものがあったら遠慮なく言っていいからな」
「あーうんうんありがとう!だけど大丈夫だよ!うん!!」
だって一泊だし!私一泊するだけだしね!……いや、ジオさんお願いだからそんな目で私を見ないで。そんな私にジオは少し用があるからと私の頭に、ぽんっとひとつ手のひらを置いて部屋を出て行った。
(・・なんでいちいち、頭撫でるかなぁ)
ふぅ、と小さくため息をつく。特にすることもなかったので部屋の中心に立ち、小綺麗なこの部屋を見渡してみることにした。小さなガラステーブルと棚、そしてベッドといった本当に必要最低限の物しかないけれど、ここは客間だろうか?これと言って目立つものは無いが、この部屋には大きな特徴がある。
「床も壁も、家具も全部、真っ白・・」
まるで教会を思わせる純白。
わたしは物心ついたときから、嫌いというか苦手な色がある。そう、それは『白』で。何故なのかは自分でもよく分からないけれど、私にとってこの色はなにか自分を否定されているようでならなかった。一日だけだし我慢我慢、そう自分に言い聞かせ眩しい真っ白なベッドに身を沈めた。やばい、超ふかふかなんですけど。ヒャッホウ!!
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突然連れてこられたお屋敷と、金髪の青年。この出会いがこれから起こる全ての始まりということを私はまだ、知らなかった。
(突然?いいえ、すべてシナリオ通り)