「ねえ白蘭」

寂れて傷跡だらけの木々たちが揺れている。霞む視界の中で、真っ赤になってしまった彼女のまっしろなワンピースを瞳にうつす。なんだかすこしだけ悲しくなった。キミには穢れをしらない白が似合うのになあって。だけどそれを赤に染めてしまったのは自分から溢れるものなのだと思うと、ため息混じりの笑いしか出てこない。愛しい彼女の膝の上で、僕は出来るかぎりの笑顔をつくって返事をする。ぽつり、冷たい水滴が僕の頬の赤を滲ませる。あぁ、ごめんね。この世界でキミにそんな顔をさせるつもりはなかったんだけど。


「・・ひとつね、言わないといけないことがあるの」
「うん」
「わたしね」
「うん」
「ぜんぶ、知ってたよ」
「・・そっか」



求めたのは、理想郷。その偽りの理想郷が音をたてて、崩れていった。だけどさ、これでよかったんだと思う。すべてを受け入れてくれていたってことだから。だって、彼女はいま、笑ってくれている。

「私、幸せだよ」

これからは、全てを受け入れて二人でゆっくりと歩んでいこうと思うよ。

「・・うん、僕も」

(残ったのは空虚?いいえ、満ち足りた世界です)

カトレア:花言葉「理想郷」
『求めたのは』は未来編最終決戦前『理想郷』は決戦後。彼には幸せになって欲しい。とか言いつつBADENDバージョンはこちら
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