「ねえ白蘭」

ぱたぱた、かわいらしい音をたてて僕の胸に飛び込んできた彼女をしっかりと受け止める。ぎゅううって包みこんであげれば、キャッキャッと嬉しそうに笑うものだから、思わず僕まで頬がゆるんでしまう。

「ふふふ、今日もナマエチャンは元気だね。・・あれ?手に持ってるのはなんだい?」
「これはね、カトレア!白蘭にあげたくて摘んできたの」
「・・白い、カトレア?」
「そう、きれいでしょ?カトレアにはね、赤・ピンク・白・黄色・緑・赤紫・青紫ってたくさんの色があるの。その中でも白蘭に合うのはやっぱり白かなって」

ペラペラと得意げに話す彼女は、薄く透き通るような花色のそれを僕へと手渡す。白いワンピースがよく似合う彼女はまだ幼さが残っていてとても可愛らしい。いや、かわいいんだけどね!ほっぺたをほんのりと桜色にし、ぷっくらとしている唇から紡がれる言葉のひとつひとつが愛しくて、僕を呼ぶその声がだいすきで。ずっとずっと焦がれ、ほしかったもの。そんなあたたかいこの空間がたまらなく愛しかった。僕にはキミだけでいいし、キミは僕のものでなければならない。僕はキミが必要だし、キミも僕を必要としている。

全部、僕が勝手に決めたことだけれど。

「私ね、しあわせ」
「え?」
「こうしていっしょにいられるだけで、しあわせなのよ」

キミは知らない。彼女が幸せだというこの場所が僕が造り上げた偽りのものだということを。そしてこの世界はもうすぐ・・、なんてね。だけど僕は最後まで守りぬこうと思うんだ。まだ、キミと笑っていたいから。

「・・ふふ。うん、僕も」
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