「シンデレラはわざとガラスの靴を置いていったと思うの」 「どうして?」 「だってそうでもしなきゃ、王子さまに見つけてもらえないもの!あぁシンデレラはなんて計算高いお姫さまだったんでしょう!」 「ふふふ、シンデレラが本当にそうだったかはさておき、キミも人のこと言えないよね」 「どうして?」 「だって、キミはこうして僕に探させようとしてる。あんなもの残して」 「えへへ、もう見つかっちゃってるけどね。白蘭見つけるのはやすぎー!」 「で、シンデレラは王子様に見つかったらどうなるんだい?」 「…シンデレラは最後、めでたく結婚するの」 「ふぅん?」 「王子様はシンデレラを愛していたから探してくれた、見つけられた。あれ?じゃあ白蘭も私を愛してくれてるってことかなぁ?」 「それは違うよ」 「がーん」 「ふふふ、だって僕は王子様ではないし、キミもシンデレラじゃないもの。お伽噺のようにいかなくてザンネンだったね」 「しゅーん」 「そろそろお話はやめにしない?この状況わかってるよね?」 「あっ、人形姫?」 「人魚ね」 「はずかしー」 「ねぇ僕の話聞いてた?」 「うん聞くから人魚姫の話してもいい?」 「聞いてなかったんだね。…うん、いいよ。ただしそれで終わりね?」 「人魚姫は王子様がすきですきで仕方なくて近付きたくて傍にいたくて足をもらったの」 「すごいね」 「だけど報われないんだよ」 「王子様を殺しちゃうんだっけ?」 「ううん。王子様を殺さなきゃいけないのに、やっぱり出来なくてね」 「うんうん」 「…自分が死ぬことを、選ぶの」 「そうなんだ?」 「なんでだと思う?」 「んー、なんで?」 「人魚姫は王子様をほんとうに愛してたからだよ。白蘭」 「…」 「うーん、やっぱり私はシンデレラにはなれなかったみたい。せっかくガラスの靴を置いて、白蘭が見つけてくれたのに」 「このリングがキミのガラスの靴?」 「…私はシンデレラになれなかったの。王子様を殺せなかったから」 「それで?」 「だから人魚姫のように私も、」 「間違ってることがあるよ」 「え?」 「人魚姫は死ぬんじゃないんだよ。泡になるんだ」 「泡に?」 「人魚姫は海に還った、いや帰ったんだ。ねぇ、キミが人魚姫なら帰らなきゃいけないんじゃないかな?その右手の銃は捨ててさ」 「…びゃ、く、」 「ねぇ、僕は人魚姫の王子様なんだよね?だったらキミを愛せないけど、殺すことも出来ないよ。だからはやく帰りなよ。キミがしあわせになれる場所に、元いた場所に」 「…私は海より陸がいいな」 「でも人魚姫は報われない」 「ならガラスの靴を履くから、また落として逃げるから」 「うん」 「もう一度だけ、私を見つけてくれますか?」 「うん」 「しあわせにしてください、王子様」 「しあわせにしてあげるよ、嘘つきなお姫様」 人魚姫よりシンデレラがいいわ! 人魚姫は泡にならず、王子様に救われました。おかしいですね、一度は王子様を殺そうとしたのに。だけど出来なかったから王子様が人魚姫に魔法をかけました。シンデレラになれる素敵な魔法を。 |