例えば。キミが宇宙人で僕が地球人だったら。きっと僕はたくさんがんばって神様になって、キミといっしょにこの蒼い世界(ほし)に住めるようにキミを地球人にしようと思うんだ。 例えば。キミが地球人で僕が宇宙人だったとしても。僕はやっぱりがんばってがんばって神様になって、キミの住む蒼い世界(ほし)をいっしょに歩きたいから自分を地球人にすると思うんだ。 僕は例えばの話をたくさん考える。だけど最終的にいきつくのはキミとのしあわせ。あー、だから、ようするに僕はキミの為なら神様にでもなんでもなってキミといっしょにいれるようにがんばっちゃうよってこと。 「例えばの話よ?」 「うん」 わぁ、びっくり。今日は僕ではなくて彼女が例えばの話を口にする。キミもそんなこと考えるんだなぁとすこし驚きつつ、うすいぴんく色のマシマロをひとつくちに運びながら僕は彼女の次の反応を待つ。まさか僕みたいに宇宙人やら神様やらなんて考える筈はないだろう、さすがに。さて一体どんなお話なのかな? 「例えば、白蘭のだいすきな彼女が病気で余命1ヶ月だとする」 「わぁ、さらにビックリ」 「いーから黙って聞いてよー!」 ぷぅ、とむくれる彼女にごめんごめんと適当に謝って自分のマシマロをあーん、とひとつおすそ分けしてあげれば少しだけご機嫌が直ったらしい。いや、だってさ?普通、なにその少女漫画的展開ーってなるじゃん?あ、今だと携帯小説みたいな話なのかな?まぁ僕は読んだことないけれどね。 「でー?」 「…で、その病気はどうやっても治らない。だとしたら白蘭はどうする?」 「僕?うーん、そうだなぁ…じゃあ例えば?」 「えっ、うーん…じゃあ例えば」 「うん」 「例えば1ヶ月毎日一緒にいてあげるとか1ヶ月でたくさん思い出つくるとか、せめて籍を入れるとかもしくは一緒に死ぬ、とか」 「ハハッ、僕はそんな意味のないことはしないよ。そんなことするくらいならすぐにでもこの手で殺してあげちゃうね。だってそうしたら苦しい思いしなずに済むでしょ?」 「…うん、白蘭らしいね」 「まっ、そんな病気くらい僕ががんばれば治せちゃうけどね」 「治らないのに?」 「治せるようにたくさん努力するんだよーがんばっちゃうの。不治の病ー、なんて所詮薄情な神サマが気まぐれでつくりあげた産物だろ?そーんな神サマ、僕は引きずりおろして僕が神様になっちゃうよ」 「神様って努力すればなれるのかなぁ」 「僕ががんばれば出来ないことはないからね!だって僕は例えキミが宇宙人でもいっしょにいれる努力をするし」 「宇宙人?」 「あっそれはこっちの話。んーと話を戻すけど、ましてやそれがかわいい僕の彼女ならなおさらがんばっちゃうな」 「そっか、幸せだね白蘭の彼女」 「でしょ?と言うわけで僕と付き合わない?ナマエチャン」 「…え?」 「大丈夫、僕が例えばの話にしてあげるから。それともなに?ナマエチャンは僕に一緒に死んで欲しかったの?」 「ちがっ…!…くもないかなーなんて」 素直なんだかそうじゃないんだかちょっとよくわからない彼女は、なんだかんだ言って憎めないしそこがまた可愛かったりする。とりあえず泣き出しそうな彼女を抱き締めてあげた。…あれ?逆効果だったみたい。とりあえずしゃくりをあげる彼女の頭をぽんぽんと撫でてあげた。…あれ、また逆効果。困ったな、うーん。あ、じゃあとりあえず神様としての役目を果たさなきゃ。僕という神様は前任の神サマがつくりあげた意地悪の産物を退治すべく、ポケットから取り出した小さな魔法の小瓶に口付ける。 「顔あげて」 「…?」 「んーそしたら…」 例えば。キミが宇宙人で僕が地球人だったら。きっと僕はたくさんがんばって神様になって、キミといっしょにこの蒼い世界(ほし)に住めるようにキミを地球人にしようと思うんだ。 例えば。キミが地球人で僕が宇宙人だったとしても。僕はやっぱりがんばってがんばって神様になって、キミの住む蒼い世界(ほし)をいっしょに歩きたいから自分を地球人にすると思うんだ。 例えば。キミが不治の病にかかったとして僕は普通の地球人だったとする。きっと僕はやっぱりがんばってがんばって神様になって、たくさんの世界からたくさんの知識を持ち帰ってキミのいる世界に帰ってくるよ。そしてキミの病気なんかすぐに治っちゃうんだ!さすが僕、さすが神様! それでね。そんなキミとずっといっしょにいたいから、僕は羽根を捨てて神様なんかやめちゃって、キミと足をついてこの世界をゆっくり歩いていこうと思ったんだ。 「はい、くちあけてー」 口付けは、苦い味。 僕が神様を辞退するまで、残りあと10秒。さて、散歩はどこにする? |