もうひとりの僕が言う。こんなことはやめなよと。どうしてと聞けば、僕はもうすぐ殺されてしまうかららしい。おかしくて笑いが込み上げた。僕があのボンゴレ10代目なんかに負けるはずがないのにね。だけど少なからず僕を心配してくれたであろうもうひとりの僕に、ありがとうの代わりにいってきますと呟いて、マーレリングを指に嵌めた。
もうひとりの僕といっても、それは僕ではない。だけどいつだって一緒で、僕たちは一心同体。離れることなんて決して許されない。そう思っていたんだけど。
「…え?」
なにがどういう訳か。準備も出来たわけだし部屋を出ようとしたその矢先、突然体に重い衝撃と乾いた高音。『それ』が放たれたであろう方をゆっくりと振り返れば、そこには「僕」がいて。
「あーあ。ザンネンだなぁ。こんなに隙だらけだなんて笑っちゃうよ」
…あぁ、こういうことだったのか。気付いたときにはもう遅くて、口からごぽりと何かがこぼれ、僕の白を赤に染め上げた。決して嫌いな色じゃない、だけど特別好きなわけでもないこの赤を見てもう笑いしか出てこない。そして目の前には銃をひとつもった少女がひとり。僕とよく似た顔で笑っていた。
「だから忠告したのに。お兄様」