「おっ、ナマエー!」
「あ、ボス。って、待って!!そこ段差が・・」
「うわっ!?ぐっ、がっ、ぐへっ!!」
「はぁぁ…言わんこっちゃない」

















「いっ、いててっ!!ナマエそこいてーって!!」
「我慢してボス。て言うか自分の家でこけないで下さい」
「ハ、ハハハ」

自分の部屋から救急箱(ボス専用)を持って来て、傷口に消毒液を塗る。傷だらけになったボスを手当てするのはもう日課のようなものですっかり慣れっこ。絆創膏をペタッと貼って、完了と告げればボスは「いつも悪りーな」と眩しいくらいの笑顔を私へと向けた。へなちょこだけど、本当にこの人はあたたかい。とてもマフィアのボスには見えないくらいに。でも・・


「ボスってロマーリオさんや他の皆の前ではかっこいーボスなのに、どうして私の前ではへなちょこのままなんだろー…」


無意識にはぁ、とため息がこぼれる。そうなのだ、ボスは普段はこんなんでも部下の前ではピシャリとしまる根っからのボス体質。だけど何故か私の前ではそれは発揮されなく、いつものへなちょこのままで。これでも一応私はキャバッローネファミリーに入って結構長く、ボスも私を信頼してくれている。ハズなんだけど・・


「あー…それはきっと俺がナマエを部下として見てねーからだな」

「え・・、あ…っ」


ぽつりと呟かれたボスの言葉に動揺し、持っていた救急箱をぽろりと落としてしまう。がしゃーん、と音をたてて飛び散る医療品を慌てて拾おうとするがボスの言葉が頭をぐるぐると回り、私はしゃがんだまま何もすることが出来なかった。だって、だって私はボスに認められたくて・・


「だ、大丈夫か?手伝うぜ」


ボスはしゃがんで私の手元にある包帯を取ろうとした。やっぱりボスは優しい。そんなやさしさがいまはこんなにも痛い。ぽたり、一粒の雫が彼の大きな掌にこぼれて落ちる。


「ナマエ…?泣いてる、のか?」
「っ、ボスは・・ボスは私を部下として認めてくれてないんでしょ…?」
「もしかして、さっきの・・」
「・・・ぐす、うん」


ボスは「なんだ」と呟いて口に手を当ててぷははと笑いながら私の頭にぽふぽふともう片方の手を置く。ボスの手は大きくて、あったかくて。


「ぷっ、そういうことかよ。認めてねーなんて言ってないぜ。俺はお前を部下として見てない、って言ったんだぜ?」
「・・同じことじゃない」
「部下として認めている。だけどナマエを部下としては見れねー」
「?意味がわからな・・」
「俺はナマエを部下なんかじゃなくて、」


ボスはふわりと私の前髪をかきあげ、露になったおでこにちゅ、と小さく唇を落とし、はにかんだ。そして囁かれた言葉に私はもううれしいとかそう言うのよりも先に顔から火がでちゃうんじゃないかってくらいに心臓があつくなった。


「っ!!……ボ、ボスのキザっ!!」

「なっ!?」


だけど私はそんなボスがだいすきよ!…なんてね。

(もっと特別な目で見てるんだぜ?)
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