別に、期待しているわけじゃないけど。


「どこ行ってんだろ」

俺の朝は小春ちゃんを起こすことから始まる。しかし小春ちゃんの寝起きの悪さは、どっかの国の某パクり巨大ロボ並にタチが悪い。まず引き戸を開ければ寝る前に仕掛けたらしいトラップの数々が俺を襲い部屋の侵入を防ぐ。まぁ俺だって伊達に真選組をやっているわけじゃない、クナイのひとつやふたつが頭に突き刺さって釘の一本や二本踏んづける程度だ。そしていざ起こそうと小春ちゃんの肩に手をかけた瞬間、彼女の飛び蹴りが飛んでくる。そうしてやっと起きるのだから、彼女を起こすという行為は少々骨がいるのだ。これも最早、俺の朝の日課になってきている。

その小春ちゃんがなにやら何処かへ出掛けているらしい。空っぽの部屋をあとにして、自室へと戻る途中に数人の隊士とすれ違ったが、


(・・やっぱりみんな知らないよな)

期待なんて、してるわけじゃなかったんだけど。こういうときに限って、今日はオフなのだ。








「・・・うわ、外 暗…」

体をさす空気の冷たさに意識が戻り、ゆっくりと重いまぶたを開けば辺りは真っ暗。どうりで寒いわけだ、もう日が暮れているどころか時計を見れば針は11時を指していた。




「え、まだ小春ちゃん帰ってきてないの?」


「・・・山崎」

「まさか・・、何か危険な任務に出てんですか・・?」
「・・・・ちげぇよ」
「なんで、目を逸らすんですか 副長」
「いいからテメーはもう部屋に戻って寝ろ。副長命令だ」
「どうして何も教えてくれないんですか!どうして、小春ちゃんが昨日から帰ってないんですか!!?」

「えっ 呼びました?」

「・・・・・・エッ」



「ちょっ小春ちゃんボロボロじゃん!やっぱり任務に、」
「あの」
「なに?」
「あー、もう過ぎちゃいましたねー・・・」
「え?」
「お誕生日おめでとうございます ザキ先輩」

「遅くなっちゃってスミマセン」

そう言って小春ちゃんがボロボロの隊服から取り出したのは、コンビニで売っているごくごく普通のあんぱん。


「おいザキー。いいこと教えてやろうか」
「エッなんですか?いいことって言ってるのにめっちゃ悪い顔してますけど」
「なんで今日お前が休みだったと思う?」
「え、それは俺が今日誕生日だからとかですか」
「ンなことで土方クソヤローが休みをくれると思いますかィ」
「おい総悟テメー俺をなんだと思ってんだ。・・まぁその通りだがな。山崎、テメーに入ってた任務をアイツ自ら申し出て代わったんだよ」
「小春ちゃんが、ですか!?」
「テメーなら半日くれェで終わらせられただろうが、アイツだからな。丸一日掛かっちまったんだろうな」
「でも、なんで」
「『誕生日くらいゆっくりさせてあげたいじゃないですか』」
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テーマ「人外ファンタジー」
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