「死ぬ」

こんにちは、真選組監察方・島田小春でございます。一体なにがどうしたって言うといまあたしを苦しめているのはこの目の前の山のように積み重ねられた書類たちである。…なにコレ。なにこの高さ。マンガでしか見たことねーよ。


「エベレストですか富士山ですか東京タワーですかエッフェル塔ですか!あれ、どれが一番デカいんだろ」
「とりあえず小さくなってるよソレ」
「まぁザキ先輩の"ソレ"より高いことは確かですねプクク」
「なにそのバカにした目。なにそのむかつく顔。殴っていい?殴っていいかな?」
「あ゙ー絶対終わらないッスよ、これー」
「…………」


ザキ先輩のバベルの塔とかマジでどうでもいいんで。問題はこの机にそびえ立ついくつもの書類タワーだ。机に向かって、はや一時間。あたしとザキ先輩に課せられたのは報告書、始末書の見直し及び修正作業。…なにこれ地味すぎる。監察は地味らしく地味な仕事でもしてろってか。オイオイふざけんなよ地味なのはザキ先輩だけなんだよ勘弁してよナメてもらっちゃァ困りますよ。


「ちょっと。なにさり気なく貶してんだよ」
「安心して下さい。さり気なくじゃないです、大いに貶してるんで」
「おいィィィ!!…ったく、とは言っても仕方ないだろ?この間小春ちゃんが仕事ほっぽって沖田隊長と甘味処でサボってたのが副長にバレちゃったんだから」
「はぁ…なんでバレたかなァ。完璧に欺いたと思ったのに」
「さぁね。次バレたら甘味処禁止令出されるよ」
「マジでかーマジで言ってんのかーやめてくれーあたしを殺す気かーそしてこの書類タワーもあたしを殺したいのかーそうなのかー」
「確かにこの量は殺人的だけどね…」
「お前はすでに死んでいる」
「いやいやなんでだよ!?」
「あ゙ーヤダヤダあたしきっと副長に命狙われてるんだ。『小春が手に入らないならいっそのこの手で…!』うわマジか狂愛か。重いな副長」
「どこに書類押し付けて殺す狂愛がいんだよ。イヤだよそんな愛情」


しかし副長がヤンデレとわかったところでなにも変わらない。にしたって終わりが見えなさすぎだろ。死ぬ。いや死んでいる。ザキ先輩の存在感が。「なにそれ地味って言いたいのかそうなのか?」そーいやザキ先輩関係ないのになんで手伝ってくれてんだろ。まさか地味な作業がすきなのか?そっか、ジミーだもんな。


「…小春ちゃん」
「はいー?」
「これが終わったら…、」

「よう進んだか」


突如発せられた低い声にザキ先輩と共に振り向くと、部屋の前で壁に壁に背を預けるようにして立つ副長の姿があった。なんか偉そうだな。いやまぁ偉いんだけど。


「小春。お前、」
「ごめんなさい副長!狂愛は勘弁してください!あたしまだ生きてたいんで!やり残したこといっぱいあるんで!ザキ先輩抹殺とか」
「いやいやなんの話だよォォ!!?」
「てかなんで俺のこと抹殺しようとしてんのォォ!!?」
「で、なんの用ですか?」
「……山崎、テメーも大変だな」
「……いえ、慣れてきました」


いやいやなに二人してため息ついてんの。ため息つきたいのはこっちなんだよ。話してる間も手は動いてんだよ。いや別に真面目ちゃんアピールとかしてないよ?うん。


「小春」
「え…だから狂愛は…」
「ちげェよ!!…ったく、それ終わったら褒美に甘味処でも連れてってやる。だからちゃっちゃと終わらせろ」
「マジですか!うわぁ…さすが副長!カッコイイっす!はっ…これは狂愛と見せかけてのまさかのツンデレ…?副長はヤンデレじゃなくツンデレだったんですね!?」
「だから意味わかんねーよ!!…じゃあまた来るからな。終わらせとけよ」
「はい島田小春頑張りまっす!!」







そして後日わかったことですが、サボりがバレたのはザキ先輩が副長命令で密告していたからだそうです。

「己のせいかァァ!!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!?」

もちろんその後ステーキといちご牛乳奢らせました。



ザキ先輩とあたしとご褒美


(でもなんで手伝ってくれたんですか?)
(…さすがにあれ全部はキツいでしょ?)
(ザキ先輩……だったら全部己がやれやァァ!!)
(ええええええーー!!?)

20100723
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