本編16話のジョット視点






予想はしていた、だからいやだったんだよ。



「霧、ナンパはやめてくれるかな?」

言葉の続きを遮るようにして引き寄せたアリサの体はすっぽりと自分の腕の中へとおさまった。これがスペードの前でなければ、自分よりもちいさな彼女の頭を撫でていたのだけれど。


「ジ、ジオ・・!」

「おやおや・・盗み聞きとはまた悪趣味ですねぇ」

「アハハ、盗み聞きだなんて心外だなー。俺はアリサに用があったのを忘れてこっちに戻って来ただけだよ?そしたらお前が在り来たりな言葉でアリサをたぶらかそうとしてたんだよ」

「フフフ、こちらこそ心外ですよ。僕がそのような低俗のする低レベルな行為をするとお思いで?」

「あぁ、思うね。毎日違った女の子を連れているお前が下心無しで近付くとは思えないよ、むしろそう考えない方がおかしいさ。まぁ別にそのことを咎めるつもりはないけど、今回は別だよ。・・ついさっきも言っただろう?」


もちろん、スペードがアリサをただナンパしていたとは思っていない。だからこそ、なんだ。すこしだけ低く通す声にスペードが僅かに反応する。あぁ、アリサは気付いただろうか?なるべく、彼女の前では普通でありたい。その為にもはやくこの場から立ち去りたかったのだが、スペードが自分から視線を外しアリサにへと向けて口を開く。


「ところでアリサ?一番最初にプリーモとデートをしたと聞きましたが?」

「・・なんで霧が知ってるのかな?」

「フフフ、企業秘密です」

「えっ、いやあれはデートというか・・まぁ出掛けはしましたけど・・」

「そうですか。なら私とも行きましょう。これから何かと関わることになると思いますし、あなたといろいろ話したい」

「え・・、えええええ!?」


ちょっと待て。どうしてそうなるんだ。予想していた通り悪い方へと事が進んでいることに思わずため息が出そうになった。そしてスペードの意味深な言葉が引っ掛かる。たしかに彼等をここに呼んでアリサのことについて話したのは俺だし、これからアリサはこちらに大きく関わることになるだろう。けれど、まだ彼等は知らないはずだ。・・じゃあどうしてスペードは干渉してくるんだ?

頭にぐるぐると思考と疑問が駆け巡る中、突然自分の腕の中から消えるぬくもり。そして目の前でスペードに腕を引かれ耳元で紡がれる言葉に「は、はい」だなんて返事をしているアリサの姿。それを聞いたスペードは満足そうにいい子です、と微笑んだかと思うと、こちらに視線を向けゆるく弧を描いたくちびるでちいさく呟く。


「仕返しですよ」


やってやったぞとでも言うような楽しげなその言葉に思わず、普段はしまっている本性と言うものが出てしまいそうになったがその前に奴がこの場からおさらばしたのは言うまでもない。


あぁ、もう明日は雨でも降ってくれないだろうか。

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ジョット視点でした。今回はけっこう大事な話。ジョットもスペードの考えていることはよくわからない感じです
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