「もうすぐかなー」

手を空にかざせば、血の通った自分の指に嵌まっている指輪が太陽のひかりによってきらりと光った。それをぼんやりと眺めていれば、春の青い風にのせるようにして、ふんわりと甘い甘い匂いが僕の元へと運ばれる。それを辿れば、まっしろなワンピースをゆらしながらティーセットを手にこちらへとやってくる彼女の姿。


「今日はね、スコーンを焼いてみたの」

「うん、いい匂い。今日は珍しく失敗してないじゃん。昨日のベリータルトはちょっとすごく焦げてたから思わず正チャンにお腹の薬貰おうとしちゃったよ」

「し、失礼だよ白蘭!・・今日は自信作だから大丈夫。あのね、蜂蜜をたっぷりかけて食べるの。あ、ココアならいいけど今日は紅茶だから、マシュマロはいれないでね?」


「わたし、この時間がいちばん好きー」

「」

「きらいじゃないよ」

「・・いじわる」

「あはは」

「んー…あっ、じゃあさー?もしもこの時間がなくなっちゃったとしても泣かないでよ?」

「泣かないよ」

「えー。そう言われるとなんかなぁ。じゃあやっぱり泣いてほしいな」

「」



「ね、白蘭」
「んー?」

「明日も明後日も次の日もずっとこうやって
雨の日だったらお部屋の中でいいよ?それでね、お菓子だってもっともっとうまく作れるように頑張るからこの時間を守っていこうね?」

「うん、そうだね」

「約束・・?」

「ん、約束!」




「嘘がへただなぁ・・白蘭は」

「」