「そーうーご!アイス食べよ!」

アイツが来てから一週間ほどたった暑い暑いある日の午後。棒付きアイス、いまで言うアイスバーをふたつ手に、ぴょこんと現れたのは名前だった。


「またアンタですかィ」
「またとか言わないのー」
「ここには慣れやしたか?」
「ん、みんな優しいからね。ほらアイス!総悟はソーダでしょ?」
「…おう」


手渡されたアイスは涼しげな空色のソーダ味。俺の好きなものを覚えていてくれたんだなと思うとちょっぴり嬉しいわけで、しゃくりと口にしたアイスが普段のものよりなんだかおいしく感じた。


「おいしい?」
「つめてーや」
「そりゃアンタ、これアイスだから」
「今日は暑ィですからねェ」
「ほんと。こういう日はアイスよねぇ」
「名前のはりんごですかィ?」
「うん」
「ひとくち」
「えっ、あ!」
「これもまぁまぁうまい…、」
「っ、」


……え。これはなんだ。

口の中に広がる甘酸っぱさに、名前の好きなアイスもたしか昔からりんご味だったな、だなんて考えながらふと顔を上げれば、目に入ったのは何故だか顔をリンゴみてーに赤く染めながらそっぽを向いている名前の姿。そして俺が食ったことによって半分以下になってしまった名前のアイス。そこで気付いた。コイツ、…


「名前」
「ななななななに!?」
「アイス減っちまったからって拗ねないでくだせェよ。俺のもひとくちあげやすから」
「なっ、い、いいいいらないいらない!わ、わたしはりんご一筋だからソーダには浮気出来ない!」
「ホラ、いいから」
「っ、」


残念ながら俺はすべてわかっている。もちろんアイスを食われたから名前が怒っているなどひとかけらも思っていない。じゃあなぜこんなことするかって?……

(S心に火がついちまったからだよ!!)


「ほらどうしたんでさァ。遠慮せずにどうぞ」
「っ、食べればいいんでしょ食べれば!」
「………」
「あ、ソーダもおいしい……って総悟?」


…………エロ。

なんだこのエロい生き物。今度は思わずこっちがフリーズした。上目づかいに赤く染まった頬。そして棒付きアイスをくわえてる姿を見たら思い浮かぶのはアレで。いやもうアレしかない。

名前が俺の(アイス)棒をくわえてる。


「…すいやせん。腹冷えたみたいでさァ、厠行ってきやす。こりゃもう今すぐ行かねーとまずいでさァいろんな意味で」

「え、そ、そんなに!?大丈夫?」

「さささささ触らねェでくだせェ!?いや別にイヤなわけじゃねーですがなんつーか今はその危険っつーか俺ピチピチの食い盛りの18歳っていうか。いろんな意味で」

「いやいや言っている意味がわかんないけど。わたしがオバサンって言いたいのかそうなのか。ってかキャラ壊れるほどヤバいなら早くいっといで」

「……誰のせいだと思ってんでィ」


名前には聞こえないように呟いて、立ち上がった。慌てて口に含んだアイスは冷たかったはずなのに、ビックリするほど体温は上がったままだった。しかもこれはアイツのかじったヤツだと思ったら余計に身体が熱くなった気がした。……なんだよ、コレ!

「あー!あちィな今日!」

誤魔化すように、すこし大きめな声で呟いた。


なんてったって、食い盛り



(……あれは反則だろ、)

20100708
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