ひとつになれない



アミティは僕が森の奥で捕まえたとっておきのムシをあげても苦笑いをしてしまったし、そこで見つけた黄色い花はアミティの手へ握らせたはずなのにどういうことか見事に花瓶に刺さって教室の後ろに飾られている。浜辺で拾った波の音が聞こえる白い貝殻をあげたら目をきらきらと輝かせて耳に添えた。静かな音を聴いて幸せそうにありがとうと笑ったけれど、ただそれだけだった。

プレゼントと一緒に僕は想いを渡しているつもりだったのに、アミティには全く届いていないらしい。図書室で調べてみたらこういう人のことをドンカンというらしい。アミティはドンカンらしい。ただ気が利かないことって書いてあったがそれだけは僕でも違うとわかった。アミティは周りに目が行きすぎるのだ。僕の事もきっと見てくれてはいるのだろうけどそれは全て平均的なもので、誰かが飛び出て彼女の目に留まっているということはないのだろう。アミティには言葉で伝えなければ意味がない。逆に言葉で伝えれば分かってもらえると思ったんだ。

「好き」アミティは一瞬目を丸くしたんだ。深く深く沈んでいきそうな緑の瞳がゆらりとなって、僕は一瞬胸を高鳴らせたんだ。瞬きをして次僕が目を開いた時にはアミティの表情は笑顔になっていて、僕の頭を期待が支配をしたんだ。

「あたしも大好きだよ」
「…」
「みんな、大好き」

君の笑顔はとても可愛かったのに、言葉にまるで突き落とされているような感覚でぐらりと頭から上が言う事を聞かなくなるのを感じた。違うんだよ。アミティそうじゃないんだよ。黄色いツキマワリも青いヒマワリも、全部違うんだ。

「アミティ、僕、君を嫌いになりそう」
「あ、えっ?ど、どうして!?あたしなにか悪いことしたかな…」

慌てて記憶の底を探り始めるアミティの顔には不安が滲み出ていて、僕に嫌われたら嫌なのだろうというのが一瞬で分かってなんでか嬉しくなった。

「ウソ」
「え…あ、ど、どうしてそんな嘘…」

力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。長いため息が場の空気を引き伸ばす。涙目になった目を手の甲で拭うと伏せられた目が開いて僕と視線が合った。相変わらず揺らいだその目には僕が写っている、とても変な顔だった。

「ごめんね、ごめんね」
「シグ…?」
「好きなんだ」
「あ…」
「何をあげれば、伝わってくれるのか分からない」
「シグ」
「僕の大切なもの全部をあげるから、ねえ、アミティ」

だけど今はあいにく何も持ってないないんだ。だから僕をあげる。アミティ、僕ね、君が好きなんだ。


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