ナルサク要素有り。







妻が入れてくれたコーヒーはやたらと苦かったがまあ許容範囲だったので何も言わず砂糖を入れて飲むことにした。ばさりと大きく開いた新聞はインクの香りが鼻についた。大雑把に目を通していると、背後の扉が勢い良く開いてナルトがそれはそれは慌ただしく部屋から出てくる。飛び込むように洗面台に駆け込んだと思ったら大慌てで身支度を整えてあっという間に家から出ていってしまった。ちゃっかり無くなっているトースト一枚を眺めて、ナルトが走っていた後を「おはようくらい言いなさい」そう叫ぶクシナは割と日常茶飯事の姿だ。

「ナルくん、いつに増しても慌ただしかったね」
「遅刻なんでしょ、だから早く寝なさいって言ったのに」
「遅刻?なんの?」
「サクラちゃんを迎えに行ったのよ、今日うちに泊まりに来るのよ」
「えっ聞いてないよ」
「あれ、言ってなかった…?都合悪い?」
「いやいやまさか、むしろ大歓迎」

手をぴしりと立ててミナトはそう言った。続けて好奇心の塊のような声で「楽しそうだし、何よりナルくんの友達が泊まりに来るなんてもう嬉しくて仕方ないね。」そう言うとクシナは力強く頷いてはにかんだ。

「というより、友達?恋人?」
「…どうなんだろ、本人たちもよく分かってなさそう…微妙な距離感?」
「よし、この際俺たちが二人にきっかけを」
「楽しそうだけど…サクラちゃん怒りそうってばね…」

普通なら子供が大人たちをくっつけるために考えるような作戦を心底わくわくしたように話し続ける。表面では苦笑いをしつつ実際は自分以上に何か色々と企んでいるのだろう。台所から戻りエプロンを外しながら席へ着いたクシナは冷めかけたコーヒーを飲んで顔をしかめる。舌をべえと出しながらこんなもん飲めないわと呟くので、我慢して飲んでいた俺はどうすればと心の奥底で小さな虚しさが胸を突いた。

「晩ご飯何にしようかな…豪華な感じにしたいな」
「買い物行こうか、今日は俺も手伝うよ」
「役に立つのかしら」
「任せてよ」
「ふふ、期待してる、四代目様」

ついでにデートだね、二人の声が弾んだ。甘さと苦さが戦い続けるコーヒーは、申し訳ないが残す事にしよう。ナルト達が帰ってくる前に支度をしとかなければ、二人の目が飛び出ちゃうくらいの料理を作るのだから。新聞を畳んで立ち上がり、窓を閉めながら入り込む暖かな光に、今日は間違いなく素晴らしい日になるであろう予感が止まらず頬が緩むのを感じていた。


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