ブランケット



やたらと安心感のする空間でサクラは目を覚ました。さらさらとした肌触りの布団が気持ちよくて中々抜け出せない。身体を起こせないままここは何処だと冷静に時を遡るそもそも周りを見れば一目瞭然の事ではあるが。やってしまったと目を覆った。男性の部屋でぬけぬけと眠りについてしまうなんて、有り得ない。いくらナルトであろうと、有り得ない。居たたまれなさからベッドから飛び降りた。そもそもあいつはどこに行ったの。立ち上がりこの家の主を探しに行こうとした途端、ドアノブに触れる直前扉は自動ドアかのように開いた。お茶が波打つボトルと透明なコップを二つ盆に乗せて、片腕で支えたナルトが部屋へ入ってきたのだ。

「あれ、サクラちゃん起きた?」
「ナルト…」
「いきなり寝ちゃったから驚いたってばよ」
「ごめん、任務明けでつい…」
「ぜんぜん!むしろサクラちゃんの寝顔見られてラッキーだってば」

にししと子供のように笑いながら床へ胡坐をかいて腰かけた。コップへと茶が注がれていく。なみなみ注がれたそれをサクラへ手渡す。一体自分はどれくらい眠っていたのだろう。相当喉が渇いていたのか、冷えたそれが美味しくて一瞬で飲み干してしまった。

「おかわり」
「はやっ」
「喉乾いてんのよ」

寝ると喉乾くよな〜そう一人でうんうんと頷きながら二杯目の茶を注いだ。今度は一気飲みはやめて少しずつにしよう。一口含んでコップから口を離した。

「てかアンタ、人が寝てるのに平然と入ってこようとすんのね」
「え、起きてたってばよ?」
「今はね!仮に寝てたらどうすんのよ」
「え〜そこは…さっきも言った通り、サクラちゃんの寝顔を堪能しちゃう…みたいな?」

どうしてだかぴくりと整えた眉毛が縦に動いたのを感じた。ニヤニヤと笑いながらおちゃらけたように言うそれに苛立ったのか。いや別に寝顔を眺められようが構いやしない。仮にも自分はこいつが好きなのだから、別にそこはいい。そう、私はこいつが好きでこいつも私が好きなはずだ。

「…」
「サクラちゃん?」

正直ここから先を考えてしまった自分が悔しくて仕方ない。しかし気遣ったように心配そうなナルトの声が逆に感情を逆撫でしてくれた。

「眺めるだけ?別にキスぐらいしてくれても構わないけど?」
「…はい?」

呆気にとられた彼の声で冷静さが怒りを引きもどそうとやってくるが、それ以上に自分の苛立ちは大きく強いものだったらしく口は動いて止まってくれない。

「それともアンタは寝顔見てれば幸せな男なわけ?」
「え…と、あの、サクラちゃん?」
「アンタいっつもそう、私の事気遣って平然とした事ばっか言って」
「さ、サクラちゃん!」

手を握られる感覚にようやく我に返る。そして自分の口から吐き出されたなんとも青臭い欲求の塊が自分へと跳ね返ってきて恥ずかしさで死んでしまいそうだった。

「じゃー…チューとかしちゃっても、いいの?」
「う…、いいって言ったでしょ」
「サクラちゃん…変な事したいの?」
「変な事って何よ」
「えー…いやそりゃ、そーいうさ…」
「別にしたいなんて思ってない!変態!」
「へ、へんたいって…」

正直相手はそういうことに関心があるのかないのかよくわからない。とにかく、とにかく悔しい。

「私は、アンタが思ってるよりアンタの事が好きなのよ!」

勢いで言ってしまえば相手は浮かれて笑う。そして続けざまにやってきたのはまさかの頬へのキスで、照れたように笑うナルトの表情がくすぐったくて物足りなくて悔し涙が出た。このバカ!叫びながら相手の服を掴んで引きよせたら歯がぶつかって、あまりに締まらないから逸らすように彼の腕へと飛び込むとさっきの布団と同じ匂いがして、悔しさと幸福感が混ざった涙が目を細めて笑った途端に頬を伝い零れ落ちていった。


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