「…あ、起こしちゃいましたか?」
「…いや、」

どうして彼女の声がするんだろう、まだ夢の中なのだろうか?
幸せなのだけど不思議な疑問を感じながら、まだ重たい瞼を擦る。身体はだるくて動かないので頭だけを動かすと、カーテンを開けて太陽の光を浴びている彼女の姿があった。日差しが直接差し込んできて眩しい、それもあってようやく意識がはっきりしてきた。

「…おはよう」
「おはようございます、精市さん」

あぁそうか、昨日から一緒に暮らしているんだった。幸せすぎてなにもかも夢だったのかもしれないと勘違いしてた。朝一番に桜乃の笑顔を見れた喜びを感じ立ち上がろうとするが、せっかくなのだからとある提案が湧きそのままベッドに腰掛ける。


「ねぇおはようのキス、してよ」
「…えぇ!?」
「お願い、してくれなきゃ動かないよ?」


我ながらあまりに子供っぽい要求だと呆れる。でも二人きりなんだからそれくらい言っても誰も文句言わないから大丈夫。彼女の顔を見ると真っ赤になって無理です無理です、と手をばたばたさせていた。そんな姿にも愛しさを感じるがそれでは面白くない。腕をつかみこちらに引き寄せて頭を手で固定してやった。あと数センチでキスできてしまう位置にまで持ってきてやる。

「ね、お願い」
「…っ」

言ってみると彼女はもう先程までとは比べ物にならないほど真っ赤で、心臓の音が聞こえてくる。

「…い、一回…だけです…よ?」
「うん、いいよ」

消え入りそうな小さな声でそう呟くと意を決した彼女はちゅ、と一瞬だけ俺に口づけた。あっという間に離れ恥ずかしい、と染まった顔を手で覆う。確かにキスはしてくれたけどあまりに短すぎて面白くない。そのまま台所へ逃げていこうとした彼女の腕をもう一度掴み先程より強く引っ張ってそのままベッドへと押し倒してやった。

「え…っ、ちょ、せいい、んっ」

驚いて起き上がろうとする桜乃に今度は自分から口付けてやる。朝から夜まで今日一日、俺のことしか考えられないように、長く。

「…んー!」

息が続かなかったのか苦しそうに声を上げた。彼女はいつもキスをすると息を止める、そんなことしても苦しいだけなのに。名残惜しいが離してやった。

「な、なにするんですかぁ…」
「朝から桜乃がかわいかったから、つい」

そう言いながら彼女の服へ手を差し込むと驚きの声を上げる。

「あ、あさごはん…、やっ」
「ふふ、君を貰うよ」

せっかくの休みなんだ、君と一日中一緒にいたいじゃないか。さっきも言ったけどそれなら嫌でも俺のことしか考えられないだろうし。あぁ、それにしても朝から元気だなぁ。こんなときに冷静に考える自分に苦笑した。
夢現



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