いろいろと注意







女の足が腰へと絡みついてきた、こんなんじゃ足りないってか。はっと嘲笑って女の顔を見ると、上気した目でこちらを見ていた。ベッドの横には小さな机。その上には水の入ったコップ、そして無造作に散らばった市販の睡眠薬やら精神薬やらがごちゃごちゃと。そんな物を横目に見ながら奥をずんっと突いてやるとまた気持ちよさそうに声を漏らした。俺は何をやっとるんだか、やっている割にどんどん冷静になっていく思考は、最終的にある少女へと辿り着いた。彼女は、竜崎は、綺麗だった。顔とかそういうのは抜きにして、まあ少なくともこの目の前にいる女よりは遥かに可愛いし綺麗だろう。というか比べるのも失礼だ。いっそのこと竜崎をイメージしたままやってもよかったが、あまりに違いすぎて無理だなと笑った。そして「気持ち悪い」と聞こえない程度の声でぼそりと呟くと女は何?と聞き返してきた。他の事考えてないでさっさと進めてよと急かしてくる。今度はそんな相手の目を見て言ってやると、顔を歪ませて頬を思い切り平手打ちをしてきた。ああ女って本当に面倒くさい。


「お前さんのここ、がばがばで全然良くないんじゃ、どうせならもの凄くやりなれてそうな人と思って捕まえたが…逆効果だったみたいぜよ」


そう言うとまた叩こうとするから腕を掴んで止めてやった。しかし空いた方の腕を掴み損ねて先程のコップの中の水を思い切り掛けられる。舌打ちをすると腹を立てて不様に唸る女にこのあばずれと一言吐き捨てて、入れっぱなしの萎えた自身を抜き出して服を整える。女が薬が切れたようにヒステリックに何やら喚いていたが、もう聞く耳も持たなかった。マフラーを首に巻いて立ち上がる。やらせてくれてどうも、と手をひらひらと振りながらさっさと部屋を出た。扉越しにガンッと音が鳴った。時計か何かでも投げたのだろうか、別に興味はない。


外は真っ暗だ。携帯を開くとその眩しさに顔をしかめる。待ち受け画面には新着メール一件の文字、マナーモードにしていたから気付かなかった。メールを開くとそこには竜崎桜乃の名前。「風邪をひいたって聞きました!大丈夫ですか?」短いその文の途中と最後についていた絵文字が嫌に目に入る。「あんまりよくないから、会いに来てほしい」そう打ったのはいいが全部嘘だし、まずそんな恋人みたいな文、と爆笑したい気分だった。ああ纏わりつく香水の匂いが気持ち悪い。微かに残る女の感覚も気持ち悪い。あのヒステリーを起こした時の耳に突き刺さるような声も気持ち悪い。かけられた水がいつまでも乾かなくて気持ち悪い。そういえば名前も知らないあの女の全てが気持ち悪い。そう思いながらそのままメールを送信した。竜崎は優しいから断る事もないだろう。失笑がふはっと零れた。早く帰りたい。早く汗も香水の匂いも精液も、何もかも洗い流してしまいたい。女の触れたものすべてを早く捨ててしまいたい。込み上げる吐き気を堪えながら、メールの返信を待った。
よろしくアンドロイド



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