高校の帰り、電車の中でぼんやりと外を見ていた。もう太陽が沈みそうだ。電車は赤い光で染まっていた。ふと視線をほかの場所へ向ける、いつも電車が通るたびに視線を奪われていた花屋がある。そこには一人の少女がいた。通り過ぎる一瞬しか見えないが、この時間はいつも店番をしている。長い三つ編みと大人しそうな顔がとても印象的だった。俺はあまりに退屈だったから、彼女に恋をしたんだ。


その花屋の隣には大きな桜の木が生えている。だから彼女の名前は桜にした。華のように綺麗だからだというのもある、俺は単純だ。


「どこに行きましょうか?」


桜は少し照れながら俺を見て、首をかしげた。お前とならどこでもいいよと言うとまた顔を赤くして笑った。たくさんデートをした。と言っても俺はお金がなかったから、公園とか、そんなんばかりだけど。いつかお前にプレゼントをしてやる!と張り切ったら、期待してますね、そう言って微笑んだ。胸がぎゅっと締め付けられた。


季節が過ぎた、桜の花は全部枯れて落ちてしまった。それと同時に彼女もいなくなった。電車から見る花屋の看板は無くなっていて、沈んでいく太陽があまりに眩しくて俺は目を伏せた。俺はあまりに退屈だったから、彼女に恋をしたんだ。












「なんてことになればいいのに」











ああ全部妄想だなんて!なんておかしな話だ!と笑うように、電車がガタンゴトンと鈍い音を立てた。
花屋の娘



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