前にジャッカルに言われたことがある、お前はお気楽でいいよなあって。そうだ。俺は前向きだ、なんてったって天才様だから。でもそれはテニスに関してで、恋愛、というかこいつが絡むとどうも弱いみたいだ。握った手の先にいるオレンジ色の夕日に染められた竜崎を見て、なんだか感傷的な気分になった。下を向くと長く伸びた二人の影も手を繋いでいる。

「なあ」


抱き締めていい?断られたらショックだから、返事を聞く前に腕を引いて抱き締める。俺の腕の中にすっぽり収まってしまう竜崎は改めて小さいなあと思う。あーあ、今恥ずかしい顔してんだろうなあ、俺らしくねえ。

「どうしたんですか…?」
「べっつに」

恥ずかしそうに控えめな声で尋ねてくる竜崎に、心臓を掴まれる感覚がして、悔しくて少し強めに返事を返す。あ、やばいもしかして今の言い方傷付けたかも。言ってすぐに押し寄せてくる後悔の念。ああもうどんだけ好きなんだ。青臭い感情が頭を支配して、堪えきれなかったそれが、涙になって溢れた。

「っ」
「丸井さん…?」

止まってくれお願いだから。こんな情けない彼氏がいてたまるか。目をかっ開いて力を入れてもまた滲む。オレンジの視界がじわりとぼやけた。見られたくないから竜崎の肩に顔を埋めた。

「ねえ、桜乃」
「え、あ、はいっ」
「…ずっと俺の傍にいてよ」

無意識に呼んでいた彼女の名前とこっ恥ずかしい願いに、竜崎がわたわたと慌てているのが抱き締めている感覚でわかった。そう、お前はずっと俺の傍にいればいいんだよ。いつの間にか暗くなっていた空の下、俺は甘ったるい香りのする彼女にやられて、そんなことを考えていた。
メランコリック週間


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